ここ2年くらい、生活の合間に新たにははじめたことがある。
着付けである。
いけばなを始めてから10年くらい経ってくると、さすがに着物とまったく無縁ではなくなる。
私が所属している流派は比較的着物を着ないことにも寛容で、持っている人や着たい人や重鎮の先生たちはだいたい大きなイベントなどでは着物を着ているものの、必ずしも着なければいけないものではない。*1
私自身はタンスに眠っていた母の振袖や訪問着があったため、結婚式とかパーティーとか装いにTPOを求められるシーンの時には、頭を悩ませなくて済むという理由で何度か着物で出席したことがあるくらいだ。
着付けは美容院でやってもらうもの、という感じだった。
ここ7年くらい自分のなかで着付けはいつかできるようになったらいいなくらいの感じでペンディングしていた課題だった。
いつか海外とかで着物を着るようなシーンがあったとしたら、自分で着付られないと話にならないな、とぼんやり思っていたからだ。
でもどこで習ったら良いのかとか*2、仕事が終わるとぐったり過ぎてさらにお稽古に通う元気などないに等しい状態だったり、継続して何かをするということが難しい状況が続いたからだ。
ところが2年前にひょんなことから、母から誘いを受け、着付け教室に通うことになった。
せっかくの機会だし、幸いなことに時間が取れるタイミングだったことや、近郊だが近くないところに住んでいるので頻繁に実家に行くこともなくなっていて*3、そういや半年くらい全然会ってないなー、まあいいかーみたいな感じだったので、定期的に母と会う機会があるのもいいかな、と思ったのも理由だったりする。
そんな感じでちょうど実家と家の中間くらいのところで教室をやっている先生がたまたま見つかって通い始めた先生がこの笹島式と呼ばれている着付けを教えている先生だったのである。*4
この着付けの肝は腰ひもと伊達締めでシンプルに着られることで、ガシガシ動き回ったり歩きまったりしても苦しくなくて着崩れないところがとても良いなと思っていて、着物でワインとか飲んだり食べたりしたい食いしん坊の私には嬉しい。
習っている途中にイベントがあった関係で、無事に袋帯をお太鼓まで(とりあえず)結べるようになったのはとても良かった。
コロナでしばらくお稽古がお休みなり、また時間が空いたのもあって、ちょうど手に取ったのがこの本だった。
普段のお稽古では”着る技術”を学ぶことが多く、袷と単衣の違いすら大して知らなかった私はこの着物はどういうときに着るものか?とか、格や柄などについて先生を質問攻めにしている。
本書は、そういった着物の格や柄の話(季節の先取りやお祝いの席での柄など)や帯の種類のはなし、着物と帯のコーディネイトの仕方や着物を着るにあたっての心構え(そんなに大袈裟なものではないです)など、ひと昔前なら祖母や母や親戚のおばさんたちから口頭で教えてもらっていたであろう知識を、整理して本の形にしたもの、という印象を受けました。
主に女性の着物の話ですが、男性の着物の話も出てきたりしていて、普段なんとなくこうだろうと思っていた部分を補完するのに役立ちました。
着付けの手法というよりは着物についての豆知識について書かれた本なので、知りたいことが書かれていてとても良かったです。