前回の02に続き、去年よりも大々的に発売されたサウナのエッセイ集、"さうなと"。
去年の2は、ちょっと悩んで、ニューウイングのレディースデーで手に取った。
読んでみたい書き手の人が、書いていたのを知っていたから。
あと毎日あがってくるニューウイングで描かれているポップがかわいくて、なんか負けたな…、そこまでされたら買おうかな、って思ったのです。
(話ごとにあがっていたポップ。かわいい。どの話のやつか一目でわかります。)
さうなと02完売!
— ニューウイング吉田 (@newwingyoshida) December 13, 2020
最後のpopをお披露目できなかった pic.twitter.com/WbWCJOWJMF
今回の3は、去年の2の感想をツイートしていたニューウイングの吉田さんのぽつりとつぶやかれたツイートが印象に残っていて。
さうなと2
— ニューウイング吉田 (@newwingyoshida) November 18, 2020
数ページ読んだけどやっぱり面白いな
書いてとオファーきたけど
自分はまだ今年の事は書けなかったなぁ何を書いていいのかすらよくわからなかった。まだテンパってるんだろうね来年は今年の事が書けるような日常にしたいものだ pic.twitter.com/FIQbBaeQDO
今回ここに名前が載っているからには絶対にコロナの話が書かれているのだろう、と確信して手に取った。
だって、そんなの読みたいじゃないですか。
今年はサウナ施設に本が並ぶ前に、BOOTHで購入しました。*1
感想は後述しますが、重い…、重いよ…。
とにかくすごいと思ったのは、"去年の空気がそのままエッセイに閉じ込められていること"。
あとで知ったのだけど、それもそのはず。
実際に去年書かれたものだったものが、どうやら編集長の手によって寝かされ、今回世に出された、らしい。
このニューウイング吉田さんの"充分な理由"と金春湯 角屋さんの"最初の緊急事態宣言振り返って"の2本の対をなす現場エッセイを骨格として(内容も重さと軽やかの対をなしている感じなのである)、さまざまな観点から書かれるエッセイは、やっぱり去年空気を保存した1本があることによって、ほかのエッセイがいきいきと展開しているように感じました。
サウナがすきな人、銭湯がすきな人、しんどい思いをして足掻いていた人、今頑張っている人、業界をいろんな角度から眺めたい人、エッセイの著者のファン、登場するサウナ施設を愛してやまない人、サウナ施設全般のファン…etc
いろんな人に手に取ってもらいたいエッセイ集です。
温浴施設の人にはとりわけ読んでもらいたいです。
(読んでると思うけど。)
以下ネタバレを交えながら、一本ずつ感想を書きます。
目次の著者名、敬称略表記です。
- サウナマン目線で綴るコロナ禍とサウナ (サウナマン)
- 充分な理由 (ニューウイング 吉田)
- 火を見るよりもなんとやら (広岡ジョーキ)
- やっぱりサウナは生活にかかせない (Taki)
- 恋しや SPA HARBS (梶本時代)
- 最初の緊急事態宣言を振り返って (金春湯 角屋)
- 2020.11.22〜2021.08.15 (おひや)
- いつの時も風の吹く方へ (フリーアウフギーサー五塔熱子)
サウナマン目線で綴るコロナ禍とサウナ (サウナマン)
サウナマンさんはサウナ関連企業で営業マンとして働いている方である。
コロナ禍の真っただ中に施設をまわって、あちこちの施設から見聞きした話がさらっとしたトーンで書かれている。
そういえばコロナ禍が2月とか3月とかにぬるっと始まってから、このウイルスはほんとに未知のもので、市井で生活する私はただただ右往左往していたのを覚えてる。
この頃の自分のサ活を読むと、マスクやトイレットペーパーが品薄になって、次にアルコールの消毒液が棚からなくなって、仕事終わりに何軒もスーパーやドラッグストアを歩き回ってようやく物を手に入れたあと、疲れきってロスコに入っていたことなどが鮮明に書かれていて。
サウナに入りながらなんとか意識を保っていたように思える。
怪しげな話やデマもよく職場で聞いたりLINEで出回ったりしていた。
誰もこのウイルスにどう対応したらいいのか答えをもっていなかったなかで、感染の場になりうると考えられた温浴施設への重苦しい圧力は、現場で働く人間のことを一切考えていないよな...、と感じつつもそれをSNSに発信するのは戸惑われて。
正義のこん棒怖い。
自分自身も空気や仕事に適応していくことでいっぱいいっぱい過ぎて、とにかくどうにか生き抜くことが先決だった。
とにかく集中する混雑をどう分散させるか、とか、宿泊メインだったところがサウナの魅力に気づいて力を入れるとか、いろいろ悩ましい現実が相変わらず横たわっていることは確かで、先行きが明るいとは言えない。
でも
でも、サウナに入った帰り道に、「まあ、できることをひとつずつやるしかないか」と思わせてくれる力はある気がしています。
というのは同感で、それだけは今の厳しい状況下での救いかな、と錦糸町の街を歩いて思いました。
充分な理由 (ニューウイング 吉田)
これを読みたくてこの本を買った、と言っても過言ではない。
内容的に、明るく楽しくサウナ流行っていいね~!というトーンのものでないことは読む前からもちろんわかっている。
そして、たぶん、ずしりと重い内容であろうことも。
それでも読みたい、といろんな人に思わせるのは、やっぱりあちこちから引っ張りだこで今のブームをつくってきた吉田さんの人徳なんじゃないかと思う。
案の定、読み始めたが”決めあぐねる”という1つ目の構成タイトルだけでも最初から重い。
確かにあの時こういうドーンとした重苦しい空気だったな、と思ったけど、ここまで鮮明に描き出されると読み進めるのにこっちも心の準備がいる。
少し読んではしおりを挟んで本を置き、twitterなどで気を紛らわし、ワインを飲んでまた読み始める。
アルコールでも入れないと正常な思考とメンタルではこれはとても受け止めきれなかった。
このエッセイでは、2020年4月の1回目の緊急事態宣言が発令されようとしていた時期から1か月半の休業を経て営業再開するまでの、支配人としての決断ややるせなさ、休業期間にやっていたことなどが鮮明に書かれている。
正直、そんなことまでさらけ出すのか....!もういいよ....、そんなに抉らなくても....!と思うくらい、とにかく生々しくて、いろんなことがさらけ出されていた。
去年書けないなぁ、と言いながら、これを書かれていたとは。
本当に凄い。恐れ入りました。
この文章を世に出してくださったことに感謝します。
毎月の売上の前年比で出てくるマイナスの数字が、何を意味するのかが分かってしまって、思わずぐふぅ.....と唸りながら読んだ。
今この環境下で売上がアップトレンドな施設はそうないと思うけど、それにしても現実は容赦ない。
この前Youtubeで見たサウナ王が、挨拶で言っていた”前年比売上4割減でとどまるくらい”は本当にマシな方なんだな、というのは今年に入ってから閉館した施設が相次いでいることもあり、重くのしかかってくる。
特に閉店の予告がなかった埼玉の武蔵野健康ランドや富山のアラピア、予告から閉店までに期間が短かった水道橋のアスカの閉鎖には多くのサウナ―が震撼し、悲観にくれたのはそんなに前の話じゃない。
様々なことを考えると、簡単には続けてほしい、と言えない。
でも、やっぱり言いたいです。
ほんとに営業を再開された時、ほっとしました。
先日レディースデーでお邪魔しましたが、ニューウイングが続けてくださっていて本当にうれしかったし、またサウナ室に入る機会をいただけて、好きな場所がまたひとつ増えました。
喚起ドアの横の、錦糸町の街の気配が感じられる赤い休憩椅子はたぶんこの先もずっと好きです。
あと、本当にすごいな、ありがたいな、と思ったのは、そんな状況(前年比マイナスが続いている)のなか、2020年12月にレディースデーを開催してくださってありがとうございました。
あまりに凄まじい文章で、読み終わったあとに思わずとなりでだらだら一緒に飲んでいたダリン*2にも読ませてしまいました。
ダリンは、読み終わったあとに一言。
ここに吉田さんの真骨頂が表れてるよね、ふつうこれを勇気ある一言って言えない、と。
そんなある日バイトのひとりが、「もうここに来る事が怖いです」と言った。勇気ある一言だった。
”決めあぐねる” より
本当にそう思った。
最後に、私がこのエッセイで一番好きな箇所を。
営業再開の目途も立ち、立ち寄る常連達に営業再開の日時を教えていく「みんなに言っとくよ!」と帰る後ろ姿に「みんなって誰だ!お前いつも1人じゃん」と心のなかで思いつつもまぁいい。
通常運転の再開当日、ぞろぞろといつもの常連達が入ってくる「確かにみんなだな。」と思った。
”営業再開” より
お会いできたときに感想は直接お伝えしたんですが、なかなか対面だと言葉がうまく出てこなくて。
ここに感想を書き足しました。
(読んだ直後のレディースデーだったのです。)
火を見るよりもなんとやら (広岡ジョーキ)
エッセイの雰囲気は打って変わって、3本目はロウリュ*3の話。
このエッセイは全般的に禅とか茶道とかヨガとか瞑想とかそういったものが文章から立ち昇ってくる。
端的に表現するなら、スティーブ・ジョブズが好きそうなものの雰囲気、と言ったらいいのだろうか。
(わかります?)
バケツから柄杓で水をすくい、音のないサウナでふーっと一呼吸して、背筋を伸ばし、サウナストーブに水をかける映像が鮮明に浮かんでくる文章だと思った。
私自身はサウナはただの熱い箱、水風呂は冷たい水、出たところで風がきたり椅子があれば儲けもの、くらいの感覚でサウナを捉えているので*4、著者がロウリュ、つまりサウナストーブに柄杓(ラドル)で水をかけて蒸気をあげる行為を概念化し、意味づけしていく様相を興味深く読んだ。
コロナ禍でサウナに行けなくなって、どんどんサウナを概念化していく様を記されているが、文字で追っかけていくとちょっと異様だ。
でもあの時期、突然外に出られなくなってしまったことによって街の磁場みたいなものは確かに狂っていたな、と思うので、イメージだけが肥大していく、というのはなんとなくわかる。
脳を酷使する仕事をしている人は特にそうだと思う。
そういう時は本来なら歩いたり走ったり身体を動かすことでバランスが取れるんじゃないかと私なんかは思ってしまうのだけど、1回目の緊急事態宣言時はそれすらも悪いこととして見られるような空気があったことをふと思い出して、もうすでに自分はあれを過去のことにしているのか…とちょっと愕然とする。
緊急事態宣言明けにサウナへ行き、ロウリュを思う存分堪能する姿は容易に想像できる。
気持ちよかっただろうなぁ…。
シューっと上がってくる音と蒸気が心地よい。
最初から最後までそんなエッセイだった。
やっぱりサウナは生活にかかせない (Taki)
目次にTakiさんの名前を見つけた時、あー、Takiさんか、と思った。
結構前からはてなブログで時々書いているのは知っていて、まさに調子の悪い時代になんとか読めていた書き手である。
元々銭湯愛好家だった自分が、時代の波に抗えきれずにサウナ愛好家になりとうとう諦めてサ活に登録した時に*5、2年くらい前から書かれているTakiさんのサ活を見かけて、あーそうかー、サウナすきなのかー、なんかわかるわーと勝手に思って読んでいた。
酒と肴の写真がいつも美味しそうで、淡々とした文章を書かれる方だったな、と思っていたけど、相変わらず健在らしい。
エッセイを読んでいて、そう言えばお子さんが生まれたんだったな、と思いだした。
軽快で軽やかな文章は、以前と変わらず読みやすくて心地がいい。
これだけ重苦しいテーマを軽やかにかけるのはさすがだなぁ、と思いながら読んだ。
昔の、疲れていた時に読んでいた文章そのままで、だからTakiさんの文章は殆ど文が読めなかったときにも読めたのだな、と1人で妙に納得してしまった。
エッセイで描かれる仙台での暮らしと、キュア国分町や水道橋アスカ、神田セントラルホテルはそれぞれあーなんかわかる…、と思う施設が多かった。
淡々と描く出される日常が、ちゃんと日常でほっとする。
コロナ禍、ほんとに早く終わるといいですね。
恋しや SPA HARBS (梶本時代)
さうなと3に掲載されたエッセイのなかで、いちばんコロナ禍を感じさせないエッセイである。
そう書くと言い過ぎだろうか。
医療従事者である梶本時代さんは、おそらく書き手のなかでいちばんコロナ禍の影響をダイレクトに受けられているのではないか、と推察するのだが、初めの方に少しだけ状況に触れたあとは、文中にほとんどその匂いをさせない。
感染拡大が叫ばれる今、看護師である私が病院から持って帰ってきた「不浄」をサウナに持ち込むわけにはいかない。身体の汚れは家で流して、心の疲れは思い出話で癒そう。
"2021年8月中旬" より
この2文に、コロナに纏わる一切を登場させない強い意志を感じさせられた。
ほんとに…、酷い8月でした。
さて本文のトピックは大きく分けて2つ。
水風呂にはまんきつ先生の湯遊ワンダーランドを見て夫婦でハマった、とあった。
そっちか。
最近サウナがすきです、と言ってくる人は、体感でほぼ9割くらいの人が大体ドラマ「サ道」に影響を受けてハマりました、という人が多かったので、これはちょっとうれしい。
湯遊ワンダーランド、シュールで面白くてわたしもすきです。
初回の水風呂が草加健康センターだったら、それはもう水風呂すきになると思います。
それから大宮周辺のサウナ事情について少し触れたあとは、殆どをSPA HARBSの施設紹介にさいている。
行ったことないけど、どれだけこの施設が好きか、というのは文章に情熱が宿っていて、とにかく好きなのだな、ということがわかる。
岩盤浴が充実してるのはいいですね。
私なんかはサウナばっかり入っているのですが、たまに冬は岩盤浴でゆっくりのんびりあったまりたいな、と思うことがあり、そういう時によくサウナも岩盤浴もクールルームもあって、のんびりできる施設を探してしまいますが、これがなかなか探せない。
都下だと季乃彩が良かったです。
まだ入ってないけど森乃彩やすみれなんかも良さそうで、HARBSはそう言った感じの施設なのかな、と読んでいて感じました。
冬に状況が許されれば行ってみたいな、と思います。
最初の緊急事態宣言を振り返って (金春湯 角屋)
金春湯の角屋さんは、ニューウイングの吉田さんと同じく、コロナ禍の東京で、温浴施設のまさに当事者として現場で戦っていた人だ。
さうなと3のなかでは、ニューウイングの吉田さんのエッセイと金春湯の角屋さんのエッセイが現場をどう凌いできたかということが際立って描かれていて、それぞれ業種も置かれた環境もコロナに対するアプローチも異なっているのだけど、なんとなく対となってこの本の骨格を作っているエッセイだと思った。
吉田さんのエッセイが4元素の「地」だとするなら、角屋さんのエッセイは「風」。
ちょうどいいバランスだなぁ、と読んでいて思った。
普段の何気ないツイートも、どことなく軽やかで、ふわっとしていて。
その軽快さこそが金春湯がサウナ好きから支持されている理由だとこっそり思っている。*7
角屋さんはサウナブームの中心に近いところにいた方でもある、と私は認識している。
当初はサラリーマンのSEとして働いていてご実家の家業である金春湯にはご家庭の事情でお手伝いに入られていた、とどこかで読んだ。
そのあと仕事を退職し、家業に入ってさあやるか、ときた矢先のコロナは心情を慮るとなかなかしんどかったのではないかと思う。
特にコロナによっておばあさまが番台を引退されたことには気を引き締めるとともに寂しさもあったのではないか。
私が勝手にホーム銭湯にしている斉藤湯でも、コロナになってからフロントでオーナーのおじいちゃんが立っている姿をあまり見かけなくなった。
なんとなくコロナが理由なんだろうな、と思いつつもやっぱりさみしい。*8
緊急事態宣言が発令された2020年5月、確か私もオンラインショップでお買い物をした気がする。
いてもたってもいられなくて、たぶん備考欄に何かコメントも書いた。
そういうことができたのも、早期にオンラインショップを立ち上げてくださったからで、それがなかったら、行けないし動けないしでただただジタバタ悶々としていただけだった気がする。
その時買った金春湯のTシャツは、着ていくと大体可愛いね!と褒めてもらえる。
その後2回目のオンラインサウナバザールには参加させてもらったりもして、コミュ障であんまりうまく立ち回れなかったんだけど、それでも空気さえ楽しいな、と思ったのを覚えている。
金春湯はいつも動きが軽やかで、もちろん厳しいときもあるのだろうけど比較的すんなりと時代を受け入れアップデートしていけるのは、家族で継業しているから、というのもあるのだろう。*9
最近は人気施設になってしまってなかなか行けていないのだけど、頃合いを見計らってお邪魔したいと思います。
金春湯、ボナサウナと水風呂がいいのはもちろんなんだけど、熱湯と白湯と水風呂の交互浴もいいんですよね。
思い出したら入りたくなっちゃった。
2020.11.22〜2021.08.15 (おひや)
おひやさんのエッセイはタイトルを見たとき、さうなと2の続きかな、と一瞬思った。
けど読み進めていくとそうではないことに気づく。
2はもう少し日記だったよな、と思う。
あの時期(2020年2月〜5月くらい)は、コロナウイルスという未知のウイルス対して感じていた、正体のわからない恐怖感と戦ったり、混沌としていく日々を生きるために記録を取っていた人も多かったように思う。
さうなと2に掲載されていたエッセイも、あの時期の東海地域の特殊な空気感を閉じ込めたエッセイだった。
そういう意味では、今回のエッセイの方が肩の力をが抜けていて楽に読めた。
記録してある日は連続にはなっていなくて、ぽつんぽつんと、著者の生活のトピックがあった日のことを抜き出して、まとまった文章で書かれている。
文フリ参加の日、3度目の緊急事態宣言が出されたときの名古屋の街、gw、サウナヤミ市、豊橋、オリンピック前夜、オリンピック開会式、盆休み。
どのトピックも、淡々と営まれている日常とちょっとしたイベントの描写がされている。
その時々の感情が、丁寧に描写がされているのを読んで、ああそういえばこのくらいの時期はこんな感じの空気だったな、というところもあれば、東海ではこんな感じだったのか、と意外に思うところもあり。
そんなに昔のことでもないけど、思い出すように読んだ。
オリンピック開会式の、アナウンサーのコメント。
その通りだと思ったものの、あのときどうしても私はオリンピックが受け入れられなかった。
でもそれを表にだすのがなんだかダメっぽい空気があって、お祭り騒ぎと緊急事態宣言が奇妙に交差する東京で、じっと黙って終わるのを耐えていたから、次の部分はちょっと泣いた。
その通りだなと思う一方で、1年以上も感染防止に協力するため、営業自粛やイベント中止を決めた企業、今現在もリスクを背負って感染症治療に取り組む医療従事者たち、コロナで亡くなった人たち、亡くなる間際に合うこともできなかった人たち、学校生活など一生に一度の経験を損なってきた人たち、彼らへのリスペクトはどこに行ってしまったのかと思う。彼ら一人一人の思いや決断、行動はオリンピックが終わり頃には忘れ去られてしまうのか。
"2021年7月24日(土)" より
著者が2週間に1回買っているという生花。
その日は、"白のクルクマ、ピンクゴールドのケイトウ、サーモンピンクのバラ、ワインレッドのカラー、オレンジのジニア…"はやたらピンク系が多いなと思って読んでいたら、普段は選ばないピンクをベースに選んだとあった。
夏に良く見かける花々で、ぱっと明るい組み合わせが目に浮かぶ。
ワインレッドのカラーは最近ほんとによく見かけるようになったんですが、1本入るとぐっと締まって大人っぽい組み合わせになるのでいいですよね。
カラーはその茎が描く曲線が美しくて、1本でも主役になれる美しく花なのです。
夏の夜の、ポカリの描写が沁みました。
いつの時も風の吹く方へ (フリーアウフギーサー五塔熱子)
〆のエッセイはフリーアウフギーサーの五塔熱子さん。
今は鳥取のNature Saunaに軸足を置きつつ、あちこち飛び回っています。
大事なことなので初めに書きますが、このエッセイは先日(2021年9月)に出版された「熱波師の仕事の流儀」という本で書かれて熱子さんの章を補完するようなエッセイです。*10
なので、もし熱子さんのエッセイを読む目的で購入されて、まだ「熱波師の仕事の流儀」を読まれていないのであれば、両方読んだ方がより深く楽しめると思います。
コロナに関してひとつ常々思っていることがあるのですが、施設で働く方々や熱波師の方々は本当に正直ですね。
発信を見たり、インタビューを読んだり、YouTubeを見たりといろいろみてるんですが、なんていうかほんとになんでかわからないけどもの凄くオープンな人が多いな、と感じています。
このエッセイもスタートは2020年3月。
コロナが脅威が徐々に生活に侵食してきた不穏な時期。
この時期は、当たり前に大変だったと思っていたけど、やっぱり大変だったのだ…。
この頃の私は、5月にあるサウナでたまたまお会いできた熱子さんにどう声をかけたものか戸惑いが先にきてしまって*11、励ましみたいなこととか熱子さんの風が好きです、というようなことを伝えたいけど、余計なことを言われたくないだろうか…などとぐるぐる考えてしまい、結局言えたのが、大変でしたね、の一言だったのがやっぱりちょっと悔やまれる。*12
緊張の糸がぱっと途切れてしまう感覚は自分にも覚えがあってよくわかるのだけど、サウナに入って復活するのがはやくてやっぱりすごい人だ、と思って読み進めた。
それから、「熱波師の仕事の流儀」でも触れられていたドイツで見聞きしてきたアウフグースと理想のアウフグースについて、もう少し詳細なことが書かれている。
ドイツ…。
コロナが落ち着いたらドイツにアウフグースは受けてみたいなぁ。
その頃にはうまくダリンを言いくるめて計画できるだろうか…。
AufgussWMのちょろっと上がっていた動画はこの前興味があって観たのだけど、なかなか見応えがあって第一声はうわぁ〜、"Europe"って感じがする…、ってかイタリアのチームってどの競技でもイタリアなんだな…、などと思ったりしてなかなかたのしかったです。
動きとか色の使い方とか端々から滲むセンスみたいなのがイタリアっぽい、と思って思わず笑ってしまった。
ショーアウフグースの採点表がどこかであがっていたので見たのですが、なるほど、ちょっとフィギュアスケートとか新体操に近いのですね。
10月にひさしぶりに受けた熱子さんのスカイスパアウフグースは動きがものすごく滑らかで、それはつまり"つなぎ"の部分まで神経を使っていて流麗な動きだ、と思ったのですが、どこからその発想を取り入れられてるのかちょっと納得しました。
1度目の緊急事態宣言以降なかなか厳しい環境下で、どのように根気強くアウフグースイベントを進められてきたのか、またなぜ軸足を鳥取にしたのかや、それに連なる過去の話など、なんでだったのかな?と疑問に思っていたことがするすると解けていろんなことに合点がいきました。
最後のところがととても好きなので引用します。
風のないところに風を吹かせる。それはとっても骨が折れる仕事だと思う。だけどアウフグースの魅力を信じて。また応援してくださる皆様の温かいエールの追い風に乗って、頑張ってみようと思います。
"いつの時も風の吹く方へ"より
やっぱり熱子さんは風と同じように柔らかいな、と思いました。
さらなるご活躍を遠くから願っています。
AUFGUSS WMの評価採点のはなし
サトシさんの話から気になって少し訳してたけど・・・・・もっと細かいんね😱
— no.ha.ta (@nohata1) 2021年9月20日
アウフグース競技ですね https://t.co/gjSJ9L1gta pic.twitter.com/mOlSMsUfRS
Aufguss WM視察 in POLAND🇵🇱
— 五塔 熱子 (@2525netsuko) September 12, 2021
夢だけど、夢じゃなかった!
ミラクルが重なり大会会場で決勝の前日と表彰式の後の2回!
アウフグースをさせて頂きました😭✨
きっと一生分の運を全て使いました😇
伝えたい事が山盛りですが、ひとまずご報告まで🔥@3104trans
(※換気が徹底されている状態で撮影) pic.twitter.com/WNk89itcFu
*1:今はちょうど人生の狭間で時間があるから、読んだり感想書いたりできる、というのもあります。
*2:サウナーではなく、あちこちサウナにふらふらする私に、呆れながらひっぱりまわされてサウナや銭湯に入るくらいのウルトラライトユーザー
*3:セルフロウリュ、というかロウリュするという行為そのもの
*4:水風呂好きなので水質的なものはおっかけがちだけど、体系化して理解しようと思うかというとそうは思わない。
*5:それでも半年〜1年くらいは元々銭湯を好きなのにサウナにずるずる引っ張られるの悔しいなと思ってサ活の登録を先延ばしにしていた。
*6:大宮にあるキレイ系スパ銭。何人かのサ活で時々上がってくるのを読む限り、マイルド設定のオールラウンダー型の施設、というイメージがある。
*7:もちろん、今回のサウナブームの中心として盛り上げてきたIT系の企業のオフィスの多くが五反田にあり、物理的な距離が近かったことも関連はあると思うけど。
*8:最近あまり行けてなかったから、書いてたら行きたくなってしまった。
*9:いい時も悪い時もあることを知っている人が組織にいることはかなり大きい。
*10:狙ってそう書いたかどうかはわからないですが、読むと補完関係になってるなと感じました。
*11:たぶん大変だったであろう方に、大変でしたね、というのも違うし自分ができることがあるのだろうか、いやでも本人がいちばんしんどいよなぁ…と考え込んでしまって
*12:いい大人なんだからもうちょっと気の利いたことは言えたはず…。