いくつかのドレスがクローゼットにかかっている。
美しいドレスたち。
中でもお気に入りは、"little black dress"
いまも眺めるたびに、うっとりとため息をつく。
たまに引っ張り出して、満足する。
今よりも若く仕事も人生も爆弾ばかり抱えていっぱいいっぱいだった頃、きらきらした時間を過ごしていた。
半分くらいGossip Girlのような世界観に足を踏み入れていた。
それは圧倒的に不足していた経験を補うための大人の社会勉強のようなものだった。
キラキラとたのしいことが大好きな女の子をやっていた、のだと思う。
夜のお仕事のお姉さんたちはみんな美しく、圧倒的だったし、お嬢様は笑っちゃうほどお嬢様で、どちらももの凄いエネルギーに満ちていた。
美しくなるためのあらゆる努力を惜しまない姿はとても格好良く、同時にいつも自らの努力不足を目の当たりにした。
どこまでいっても、自分は平凡な人間だ、ということをいやというほど知ったと思う。
でもそれを選んだのは、自分だった。
仮にもう1度戻れたとしたらどういう選択をするかはわからないけど、過激なきらきらの裏にはちゃんと理由があったことも知っている。
そのままのエネルギーで生きていける人がいることも、押しつぶされてしまう人がいることも。
普通のOLにしてはその期間で随分といろいろなことを学んだと思う。
今もあのときに浴びるように学んだことが土台になっていて、それなりに生きられている気がする。