前回、月刊サウナ(2023.3.26号)のレビュー記事書いた。
正直なところしばらくメンタルがまいっていて、レビューを書くことで自己嫌悪に陥ってしまう状態だったので、SNSにもあれこれ書いたりするのもやめようと思っていて、でもふちうさんのやつは感想書いておきたいしな、と思って、書くだけ書いたものの、SNSでの拡散はしなかった。*1
実際、blogを書いても意図的にTwitterに連携しない記事も時々あるので、いつものこと、と言えばいつものことだったんだけど。
ここに書いておくと、読んでほしい人には大体届くようになってきた気がする。
自己満足のためにずっと書いているので、読んでも読まれなくてもどちらでもいい、と思いながらblogを書き続けているのだけど(そうしておかないとblogは長く続かないので)、最近は記事を出すごとに大体誰かが読んでくれているのはありがたい。
お友達からの1通のDMでジャック&ベティへ
2023.3.26号は珍しく豪華な内容が掲載されている月で、現在公開中の映画「もう一度生まれる」の堀川監督と井上勝正さんの対談や、ソナーポケットというバンドメンバーと井上勝正さんの対談記事が載っていた。
それで、さらっと、堀川監督と言えばinstagramに載せているおふろの国の写真に律儀にいいねをつけていくので、なんとなく印象に残っているんです、というようなことを書いた後に、機会があったら「もう一度生まれる」も観に行ってみたい、しれっと言ったら銭湯とサウナの散歩友達からDMがきた。
「その映画なら、(先)週末までなら池袋のRosaで、それ以降は横浜でまだしばらく上映してますよ。」
横浜....
とは言っても、ああいう映画は単館系じゃないと上映していないだろうと思う。
どこだろう?と思ったら、伊勢佐木町の近くのジャック&ベティだというので、ちょうどそこには1度行ってみたいと思っていたのもあって、料金が安くなる水曜日の昼に出かけた。
横浜の老舗の映画館なんです。
1度閉館したんだけど、再開したらしくて、アド街かなんかで取り上げられたときに見かけて行ってみたいと思っていたのです。
時間がちょうどよかったので、東京から横浜までつい特急踊り子号に乗ってしまった。
東京~横浜間だと、ネットで購入する指定席券が東海道線グリーン車料金より安かったものでつい。
もう一度生まれる 感想
さて、本題に入る。
「もう一度生まれる」は中編映画で、大体40分くらい。
元々は今回同時公開されているドキュメンタリーの「還る」をベースに撮られた映画である、と公開後のトークショーで聞いた。
今回舞台となったのは深夜のスーパー銭湯。
主人公はスーパー銭湯の清掃員という仕事を通して、初期のコロナ禍で壊れていく日常の様子や、明日もやってくる日常の尊さが描かれている。
撮影地であり、映画を撮るにあたっては、横浜市鶴見区のスーパー銭湯「おふろの国」が協力している。
役者さんの演技も、なんとなくこの方の元になっているキャラクターはあの人だな、というのがすぐにわかる。
おふろの国には時々入りに行っているので、普段見ている光景がスクリーンに写し出されているのは不思議な感じだった。
どちらかというと描写は男湯の方が多かったかな。
言葉が見つからなくて、上手くこの映画の感想をかける気がしない。
でもこれを観た感想は残しておきたい。
そういう類の映画だった。
正直に書くと、コロナ禍を乗り越えることに失敗した自分にとってみれば、この映画を直視するのはちょっと厳しい。
厳しいというよりは、しんどい、が正しい。
今だってあれがなければもうちょっといろいろ人生計画が違った形にどうにかできたんじゃないかと思ってしまう。
世間はそろそろコロナ禍の空気を忘れていくような風潮になっているけど、コロナ禍の3年間の重苦しい記憶というのはそんなに簡単に忘れ去れるようなものではなくて。
みんなもいろいろなものを諦めたと思うけど、そんなに簡単に割り切ってじゃあ次へ、という気持ちにはとてもなれない。
そんな簡単でいいのかな、そんなわけないよなって。
だからコロナ禍の初期を彷彿とさせる表現は重苦しかった。
その頃はすでに自分は銭湯やサウナの愛好家としてtwitterをやっていて、当時のタイムラインを考えるとなかなかしんどかったのもある。
映画の場面を観ながら、ある2つの文章を思い出していた。
1つは以前にwebの月刊サウナで連載していた、高石さんの書く「清潔な人々」である。
この連載ではまさにスーパー銭湯の清掃員の清掃の様子が毎回描かれているのだけど、これを映像の表現にするとこうなるのか、と表現の手法が変わると受け取り方が変わるもんだな、と感じた。
特にこの映画は音にかなり意識を向けるように作られていて、音でストーリーを組み立てられているので、いつも入っている浴槽のお湯が抜かれる姿は新鮮だった。
実際に清掃のシーンを映像で見るのと、文章で読んでいて想像するのでは大きな隔たりはないけど少しずつ違う感じだった。
館内放送とかがリアルで、ああそう、いつもあんな感じで流れるよね、と思う。
デッキブラシで床をこする音のシーンは印象に残った。
そしてもう1つは「さうなと3」に掲載された、吉田さんの「充分な理由」。
劇中に、営業していた施設の電源をパチパチ落としていく場面があるんですが、不意にニューウイングのコロナ禍に休業を決めたことが書いてある1シーンの描写を思い出した。
せっかくなので、引用します。
4月19日休業
・
・
(中略)
話を戻すが、休業初日の気持ちは悔しさしかなかった。照明を消しながら人のいない館内を歩く。2階の浴室ではお湯が抜かれた二股カルシウム温泉とジャグジー、ストーブの入っていないボナサウナとテルマーレ改。サウナ施設ってやっぱり人がいないと死ぬんだなと思った。
「さうなと3」充分な理由 ニューウイング吉田
作中のシーンはまさに施設がしんでいく描写だったんですが、そういえばそんなこと書いてあったよな、とふと思い出しました。
あの時はなんていうか、規模も違えば受けている影響もそれぞれの施設で全然違っていたと思うのだけど、空気感というものが界隈に共有されていて、そういうのがにじみ出ているな、と感じた。
ちょうど初めての緊急事態宣言で休業を余儀なくされている施設が多かった頃、急遽オンラインで開催された熱波甲子園2020の映像にもやっぱりあの時の空気感、というのが流れていると思って。
思い出したのでYoutubeも貼っておきます。
初回の緊急事態宣言下にあった独特の空気感っていうのだろうか。
みんながどうしたらいいのかわからないけど、不安もありながら、とりあえずやれることをやろう、っていう雰囲気がよく映画にも描き出されてたな、と思いました。
本当に当時のタイムラインはあんな感じの空気だった。
この時の熱波甲子園、仰がれたいと思う動画は秋山温泉なんだけど、いちばん印象に残ってるのははなこさんのこの動画。
外は異常事態なのにはなこさんの熱波動画は普段通りの熱波すぎて(この時熱波師になって半年弱くらいなはず)、ちょっとほっとしたのを覚えています。
一郎さんのラジカセを首から下げながらやる熱波の映像は衝撃的だった。
別のイベントで一郎さんの熱波も見たことがあるんだけど、実際にこんな感じの熱波なんだよね。
熱波道、と言えばこの方ですね。
動画になっても井上さんがこれぞ井上勝正!という感じで、平常運転すぎる。
あ、井上さんの熱波は実際の熱波もこんな感じです。
話が長くて脱落したり、途中退室して出戻ったりするのも平常運転。
最後に残ったものは淡い希望のようなもの、というのを感じとれる映画だった気がするけど、自分としてはそこに希望があったかな?とその点には疑問を感じた。
残ったものが希望じゃないことも、現実にはあると思うので。
リアリティを追求して作られていた分、なんとなく自分はそう感じたのかもしれない。
この映画は、そんなにカッコよくない日常を営んでいくことにフォーカスされていて、その点はおふろ屋さんってそうあってほしいなと自分が常々思っているけどあまり光が当たらない部分であるのでそれが映像化されたのはよかったと思う。
でもそれを過度に尊いこと、とするのもまたどうなのかと思うところである。
日常は尊く脆いものでもあるけど、淡々と営んでいくものだから。
脆くも崩れ去ってしまった日常を映像化したことはとてもよかったんじゃないかと思う。
3.11も今回のコロナもそうだけど、時が経って喉元を過ぎればそういうことを忘れてしまうものだから。
戒め、ではないけれど、こういう形で作品として記録にしておくというのは映画にしかできないと思う。
ドキュメンタリー 還る
井上勝正さん、という人は端から見ていると波乱万丈な人だと思う。
twitterをみていると、時々何を言いたいのだかわからないことがある。
井上さんに言及すると、ほとんど全てにリプもしくは引用RTがくる。
承認欲求については、おそらくそれを是としていて潔い。
ここ数年はサウナがブームになったこともあり、何度か井上さんについては様々な媒体から記事が出ていると思う。
直近では新婚さんいらっしゃいに登場したり、ゲームのキャラクターのモデルになったりしていて、熱波道の普及活動に抜け目がない。
井上さんの記事でよく知られている記事はこれだと思う。
映像を観て、このドキュメンタリーが撮られていた頃の井上さんは自分が遠くから見ていた井上勝正だな、と思った。
サウナ皇帝としてサウナに君臨していた頃か、サウナそのものになってすぐ位の頃。
本人はあんまり変わっていない、というかもしれないけど、外から見るととっつきにくい空気をまとっていた時代の井上勝正だと思う。*2
あんまり正直に書くと怒られそうだけど、自分がおふろの国で遠くから眺めていた頃*3は手負いの野生動物みたいだな、とずっと思っていたので。
土曜日におふろの国の入り口でスタンバイしてお客さんを迎える井上さんのまとう空気はいつもちょっとピリッとしていたと思う。
ドキュメンタリーのなかで清掃主任として発される言葉は、やっぱり高石さんの「清潔な人々」の主任の登場シーンを彷彿とさせる。*4
あのままですよ、って言ってたけど、映像にしてもほんとにあのままなのか、という妙な納得感があった。
公開トークショー
水曜日の真昼間だというのに、この回はなぜか映画の上映後にトークショーがあった。
それがあるらしい、というのは映画が始まる前に映画館のスタッフさんに聴いていたのでふーんと思っていたのだけど。
まさかこのトークショーが映画を撮った堀川監督以外に勝正さんと一郎さんが来るとは思わないじゃないですか!
事前情報を何も見ていなかったので、3人が入ってきたときにげらげら笑ってしまいそうになりました。
しかも勝正さんと一郎さんの組み合わせって、どう考えてもトークがスムーズに進行しそうにない。
誰よ、この組み合わせにしたの?と思ったのは秘密ですが、おふろの国のいつもの日常のメンバーなので、予想通りトークが長くなり、うんまあそういう感じになるよね、というトークでした。
一郎さんがこういうところに来るのは珍しい気がする。
このトークショーは自分じゃなくてふろくにLover達に観てもらいたかったな~と思うような濃いようでそんなでもない内容でしたが、面白かったです。
なんとなくいつもおふろの国でこういう視線の合い方するよな~と思っているのと同じ感じの視線の合い方をしたので、一郎さんって面白い人だよなぁ、と思いました。
なんか観察されてる感じがあるんですよね。
目が合ったのは気のせいかもしれないけど。
ところで、この上映回は当たり回だったんですね。
全部やってるわけではないというのを今初めて知りました。
レトロな映画館だというのに、空気が完全にふろくにでした。
お写真タイムで少しずつポーズを変える一郎さん。
みんながやっているのは”パネッパ”ポーズです。
そのあと
ジャック&ベティで映画を見たあとは、伊勢佐木町まで歩いてすぐだったので、歩いていって玉泉亭でサンマーメンを食べました。
サンマーメンって横浜のご当地ラーメンで、大体神奈川の藤沢あたりから東京の大井町くらいまでの街中華のメニューに載ってるんですよ。
お店によって味が違うんですけど、あっさりベースの中華そばにアツアツの餡でふたしてあるのが特徴で、都内でも食べられるんですけど、やっぱりちょっと違うんですよね。
玉泉亭はそのサンマーメンの発祥のお店の1つと言われていて、本店はここ伊勢佐木町で、横浜駅東口の地下街ポルタにも店舗があります。
でも私は本店のサンマーメンが好きで、半年に1回くらい食べにきます。
東口よりもあっさりしてる気がするんだよね。
腹ごなしに少し歩いて、この後チャリを借りて満天の湯まで走った。
今日こそ満天の湯に行こうと思ってたんだよね。
こういう景色は横浜っぽいな~と思う。
上を走っているのは首都高横羽線(K1)
満天の湯 サ活
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