錦糸町。
総武線の沿線にある東東京随一の繁華街。
北口には黄金湯があり、最近オープンしたサウナ錦糸町womanがある。
今の私にとってはサウナの街、になった。
ちょっと前までは、少しの期間しんどい時期を過ごした場所でもあり、歩くと街のあちこちにその頃の記憶がふと蘇るしんどい時代の気配が残る街だった。
蘇る、といっても、キツかった時期の記憶には感情が抜け落ちていて。
思い出されるのは、その頃のきりきりとするような胃の痛さと、ポツンポツンと絵や写真のような平面的な記憶だけ。
病気明けで復職したとき、ここに帰ってきていた。
正確には、錦糸町からさらにバスに乗っていたので錦糸町の周辺に住んでいたわけでは無いのだけど。
仕事に行った帰り道、毎日のどうにもならない疲れと仕事の間中続いた過緊張がここに来るとぷつっと途切れた。
緊張の糸は業務終了時間がきたからといっていきなりは切れなくて、いつもここで電車を降りて、喫煙所でタバコを吸うことで、ようやく意識を休ませることができた。
だからどこに喫煙所があるのかを今でも覚えていて、通りがかってタバコの匂いが漂ってくると、そう言えばここに喫煙所があったんだよな、と思い出す。*1
四ツ目通りの道路標識は、苦く懐かしい記憶を呼び起こす。
そして時々カフェでお茶を飲んで一服してようやくふぅ…っと呼吸ができた。
それまでの時間は、もうその頃は毎日監獄に通勤しているようだな、と思っていたので、どうやって呼吸をしていたのかすらわからない。
まともな神経では働けないので意識を意図的に歪めて、どうにかして働いていた。
まあ、そんな状態で身体が保つわけもなく、結局退職することになるんだけど。
タバコを吸いながら街を眺めていると、なにをして生計を立てているのか検討もつかない人がごろごろ歩いていて。
でもそういうわけのわからない人がたくさん歩いていることは、当時の自分には救いだった。
働いてなくても生きていていい。
大丈夫。
大丈夫かどうかはともかく、まあ多分大丈夫だろう、と思わせる何かがこの街にはあった。
南口を出て、ニューウイングへ向けて歩く途中。*2
真昼間の風俗店の隙間を通り抜けて、普段は競馬中継を放送しているであろう謎の喫茶店でトーストを齧りながら、ふとそんなこと思い出した。
コロナの影響をダイレクトに受けているだろう街で、昼間の人通りは極端に少なく、夜も戻ったとは言えないだろう。
でも、たぶんここは大丈夫。
こんな状況でも人は営みを続けていて、どうにかやっていくために試行錯誤を繰り返している気配がある。
新宿の開き直った感じとはまた違う。
この街には、きっとこの街の矜持があるのだろう。
ニューウイングのレディースデーに行く度に、道すがらでいろいろなことを思い出す。
ああ、そう言えばこの街に全部封印していたんだっけな。
サウナに入ったら気持ちよくて、そんなことを全部忘れてしまうのだけど。
そんな時代の記憶があるから、つい浴室でも錦糸町の夜の気配を微かに感じられる、換気ドアの隣の赤い休憩椅子に陣取ってしまうのかもしれない。
あそこがいちばん、好きな休憩場所です。
錦糸町の街の気配が、ドアの隙間から入ってきます。
機会があったら、よければ試してみてください。
内緒ですが、このエントリーは下記のサ活に連動した裏話です。