レビュー概要
本書は古参のサウナーであり世の中にサウナを広く紹介してきたサウナーヨモギダ氏 (サウナーヨモギダ(ヨモギー) (@yomogida) | Twitter)による、熱波師の仕事と精神性をアーカイブする目的で書かれたビジネス書で、サウナの中でも一際ニッチな“熱波師の仕事“に焦点をあてたもの。
文章は平易で読みやすく、90年以降のサウナ文化のバックグラウンドや熱波師の仕事が生まれるまでの歴史について、またロウリュやアウフグースといった言葉の定義などが簡単に説明されていて、今サウナで話題の熱波やアウフグースの世界へのガイドとして楽しめます。
”情熱大陸サウナ版“といった雰囲気の本で、新参も古参もライトユーザーもヘビーユーザーも温浴業界のステークホルダー全ての人が、今、関東近郊のサウナ界で起こっている出来事を紐解くための手がかりになるようなそんな1冊です。
ちなみにわたしは2017年頃から趣味として主に関東近郊の銭湯やサウナまわりをふらふらして週2、3のペースでひたすら入浴しているだけの新参寄りのサウナー*1です。
本エントリーの目次置いておきます。
以下ネタバレ含みますーーーーー
ゼロからイチ(土台を作ってきた人達)
ヨモギダさんが熱波師の本を出すという情報を耳にした時、一瞬驚きがありました。
というのは、風の噂で熱波パフォーマンスが好きではないと聞いていたので意外だったのです。*2
本の内容や選出された熱波師の方々を見ると、長くサウナを紹介して来られた方の知見や洞察、今後の課題に至るまでそこそこ濃い内容をぎゅっと1冊に詰め込まれたものだと感じます。
読まれた方はみなさんおっしゃってますが、この本はやはりこの7人+コンサルタントの望月氏でないとこの内容にはならなかっただろう、と推察されます。
選出された7人の熱波師/アウフギーサーの方々はまだその仕事が職業としてなかった頃から日本のサウナ業界の熱波やアウフグースを引っ張って来られた方で、サウナにおける熱波やアウフグースカルチャーの土台を丁寧に積み上げて空気を醸成し、ゼロからイチにしてきた方々かとお見受けします。
熱波師の方々へのインタビュー(取材)をもとに書かれているそれぞれの章は凄まじい熱量で、その章ごとにまるで違うことが書いてあるのに、根底にある部分は同じ空気感があって、おなじ時代を作ってきた人の連帯感というか、同志に対する信頼みたいなものを文章の間から垣間見たような気がします。
ヨモギダさんがインタビュアーだったから引き出せた言葉も多いのだろうなと感じる内容でした。
各章について
箸休めサトシさん
箸休めサトシ(アウフグース加藤) (@3104trans) | Twitter
箸休めサトシさんが元々おふろの国にいたというのを知ったのは、何かの拍子に見た井上さんと対話していたYouTubeをみた時です。
おふろの国の方々のTwitterを眺めていると、時折箸休めサトシさん話題が親しい雰囲気で上がっていてなぜだろう、と思っていたのですがなるほど、スタートはそこだったのですね。
過去にあったいろいろなことを知りたいわけではないですが、合点がいきました。
箸休めサトシさんのアウフグースは運良く今年受けられたことがあって、よく覚えています。
女性である私はなかなか男性熱波師/アウフギーサーの風を受ける機会がないのでそれは貴重な経験でした。
その時思ったことは、箸休めサトシさんにとって、サウナは劇場なのだろうな、ということでした。*3
綿密に組まれたアウフグースプログラムは、お客さんの様子を注意深く観察しながら蒸気とタオルによる攪拌、氷やアロマ水を使ったロウリュによるサウナ空間のつくり方がとても丁寧だったことはよく覚えています。
プログラムの途中で熱くなりすぎてサウナの扉を開けて換気をしつつ、ほとんど脱落者を出さずに(しかも初中級者も混ざっている環境且つめちゃくちゃ熱い状態で)完走させる技術はすごいな、と思ったのです。
若手のアウフギーサーと一緒に入るときには前に出るより黒子に徹していて安全管理を担当されていたので、安心感がありました。
浴室から出て偶然廊下でお会いしたときに、熱くてすごく楽しいプログラムでした、とお伝えしたら、いやぁ…、思ったよりも熱くしすぎちゃって慌ててドア開けて温度調整しました、っておっしゃって、てへって笑ってたのが印象的でした。
今後は世界のアウフグース大会への道筋をつけるべくAPT*4を引っ張ってますます邁進されるかと思います。
箸休めサトシさん式の型のあるアウフグースはシンプルでわかりやすく、また気負うことなく気持ちよくなれるので今後も発展していってほしいな、とこっそりサウナ業界の端っこから願っています。
レジェンドゆうさん
レジェンド ゆう (@legendo_yu) | Twitter
ゆうさんは数少ない女性熱波師/アウフギーサーで、直近だと松本湯さん(浴室とテントサウナ)や湯どんぶり栄さんでパフォーマンスをされていたことは知っていたのですが、未だ受けられておらず、機会があったらいつか風を浴びにいきたいと思っている熱波師/アウフギーサーさんです。
Twitterで熱烈なファンの方々の感想を見るたびに、あー、これは絶対に安全で安心して受けられるやつに違いない!と思っていたのですが、この章を読んでやっぱりそうなんだ、と確信に変わりました。
アロマが変わる変化球ロウリュ、とても気になります。
香りの取り扱い(特に香りを重ね付けをする場合など)は実際のところかなりデリケートなものだと思っていて、だからこそ個性が出るし、場合によってはかなり緊張感を要する作業だと思います。
それを魅力に変えられるということは、幅広く多彩な知識を持つゆうさんの高い技術力に裏打ちされていることが推察されます。
時折SNSでのやり取りを見ていると、こだわりが強そうでとっつきにくそう…と感じることもあるのですが、プロ意識の高さからくるものだろうなという予測はしていて、読み進めていくにあたって、ああやっぱりそうなのか、と答え合わせてをしている感じでした。
今後はお弟子さんを取って育てていくことも活動の一つとして考えていらっしゃるのかなということを感じましたが、ゆうさんに教わったお弟子さんのパフォーマンスは安心して受けられると思います。
安心と安全を提供する技術をもって、温浴業界をその名の通り発展させていくレジェンドになっていかれるのだろうな、と感じる内容でした。
渡辺純一さん
渡辺純一(上野原サウナ道場師範 ) (@lsuenohara) | Twitter
渡辺純一さんのアウフグースの映像を見たのは、偶然でした。
昨年2020年、熱波甲子園の現地開催が難しくなり、Youtube動画が上がってきたのを見たのが初めてでした。
去年は例外的に、出場チームが各チームのサウナでパフォーマンスしたものをYoutubeにアップするという形式だったようですが、それによってはじめて私は熱波甲子園を目にしたのです。
コロナ禍で時間も有り余っていたので、だらだらしながら動画を眺めていたのですが、一際目を惹くチームが秋山温泉さんでした。
小道具などが何もないただただシンプルな通常のアウフグースのパフォーマンスは、シンプルであるが故にタオル捌きの美しさが際立っていて、風を繰り出す手は確かにプロの職人の手だな、と思ったことを覚えています。
繰り出される風の柔らかさが画面のこちらからでもわかる。
あの風受けたい…!気持ちよさそう!ってめっちゃ思いました。
最後のところで、“生活の中にもっとアウフグースが溶け込んでほしい”という記載があってそこにとて共感しました。
私自身、凝った趣向のショーグースや(アウフグースショー)や熱波も好きだけど、熱波自体がブームの後も残り続けてほしいと思うので、それにはやっぱりもう少し熱波やアウフグースが日常に溶け込む必要があるのではないか?と感じるところでもあり、この一節はとても心に残りました。
宇田蒸気さん
うだ(宇田蒸気) (@sauna_uda) | Twitter
事前に開催されたTwitterのスペースを聞いていたときに、この章はヨモギダさんが宇田さんをよく知っているのもあって、肩の力を抜いて話を聞けた、というようなことを話していたので、どんな内容か気になりつつもけっこう気楽に読めました。
宇田さん以外の登場熱波師さんは、熱波師として生計を立てている方がほとんどなので、聞くのも書くのも真剣でエネルギーが必要だったのだろうと思います。
プロの方ってプロである故に、投げられるボールのエネルギーが全然違うとおもうのです。
宇田さんが兼業熱波師だから投げられるエネルギーの総量が足りない、というわけではないのです。
他のどの熱波師/アウフギーサーよりも熱波師としての視点とユーザーとしての視点をバランスよく持っていたからこそ、この章についてはサラッと読めるのだと思います。
内容も重いか軽いかでいうとたぶん軽め(に感じます)。
けれど、サウナやアウフグースへ投げかけられる疑問や言葉は鋭くて重く非常にうまいバランスだと感じました。
宇田さんが一目を置いているアウフギーサーとして名前をあげていらした元・湯らっくすの増本さん( 増本 (@MyProcherrix) | Twitter )のベッドアンドスパ所沢へやってきた話が出てきた時には正直少し意外でした。
というのは、私の中では、湯らっくす時代からアウフグースの技の紹介動画をTwitterや Youtubeでアップしていたのは知っていて、あぁ美しいな。魅せる技術の持ち主だな、と思って見ていたのですが、それと同時に“タオルを美しく振れて魅せる技術がありさえすればアウフギーサーとしてはそれが正解なのか?”といった議論の真っ只中にいる渦中の人、という印象もありました。
だからベッドアンドスパ所沢に所属し、温浴スタッフとしても働いている、という話を耳にした時は少々意外だったのです。
若さ故に注目されることも多く、時には驕ることもあると思います。*5
増本さんのSNSを見ていると自身の昔の数多くの失敗を思い出させられて、恥ずかしさが込み上げてくることもあり、直視するのには勇気が要ります。
SNSのやりとりには危うさを感じることがありますが、若さというのは同時にかけがえのないものであり、時には謙虚に、また時には傲慢なくらいのエネルギーで業界を引っ張っていって欲しいアウフギーサーの1人だと思っています。
4番目にこの話がきたのは読み手としてはとてもありがたくて、ドンドンドンと3つそれぞれの強い個性を読んだ後の、終始やっぱりサウナっていいよね、(コロナ禍が落ち着いたら)サウナ旅もおすすめでサウナをもっと学んでもらいたい、というさらっとした感じはとても爽やか。
宇田さんの目線が常に熱波師としての目線とユーザーとしての目線と複眼的で冷静なのは本業が会社員だからでしょうか。
サウナ愛を感じるけど、ふとしたところで怜悧な判断が見え隠れする。
あとでもう一回読みたい、と思うときに読み返すのはきっとこの章だろうと感じる印象深い章でした。
大森熱狼さん
大森熱狼 (@oomoriatsuro) | Twitter
度々スペースの話で恐縮ではあるのだけど、大森さんの章は当初の企画の段階では組み込まれていなかったらしい、ということをおっしゃていてそうなのか、と思って半分寝ながら先日のヨモギダさんのスペースをきいていました。
熱子さんの熱烈な推薦とアピールで、この企画に組み込まれたようです。
私の勉強不足で正直なところあまり詳しく存じ上げなくて、知っていることというと川口にあるゆの郷 SpaNusaDuaのテントサウナでアウフグースをしている、ということくらい。
お名前は耳にしたことがあるけど果たして…と不安と期待入り混じりつつ、熱子さんが自分を外しても大森さんは入れて欲しいといって推した人であるという情報を頼りに章を読み進めました。
読み進めていくと、なるほどいぶし銀のようなタイプの方でした。
書かれている内容に、なるほどなぁ、と共感する面があったり、そういう経歴なのかと思ったり。
思っているよりも、この本に出てくる熱波師さんたちはタオルにこだわりがない人が多くて意外でした。
弘法筆を選ばず、という慣用句をまさに地でいく感じですね。
初めてプロの熱波師を職業にした、という記述を読んで、まさに後ろから続いてきている若き熱波師やアウフギーサーのはしりの存在なのにあまり知られていないのは勿体ないなと個人的には感じます。
ところでやはりプロ化しようと思うとスポンサーが必要になるのはなんでも共通するところなのですね。
ほかのアマチュアスポーツなどを見ていても思うことなのですが、以前よりも企業とセミプロ(陸上などでいう実業団チーム)の関係性は緩やかになった同時にむずかしくもなっているなというのがここ5〜10年の流れだなと感じています。
というのも、以前だったらどこかの企業に所属してて、練習して試合で最高のパフォーマンスをあげる、ということが選手生活の王道だったと思うんです。
それが今現在は企業側にもチームや人をまるごと抱える余裕がなくなって、選手やチームそれぞれがプロとしての自覚を持ち、個人でもスポンサーを探してきたり、あるいはその仕組みを作ったり、個人個人の能力を開花させつつ稼げるような選手が強い、という風潮ができつつあり、必ずしも企業に所属してパフォーマンスをするのが正解ではなくなってきているな、と感じています。
もちろん、100%のパフォーマンスをあげるのは当然なのですが、SNSやYoutubeの台頭やそれによる集金機能、また企業PRや広告塔としての役割を期待して新興企業がお金を出したり、広義の地方の地域おこしを目的として地域密着型のチームが一体となって汗をかいたりと様々なオプションの組み合わせで数多の道が開かれつつあり、こういった流れは温浴業界にも波及する可能性はあるだろうと感じています。*6
観光や街おこしの目玉としてサウナや温浴事業に注目されることもあるかもしれません。
そういう流れになった時、大森さんは自然とそういったサウナの現場にいらっしゃるような気がします。
“風が主役”の熱波は心地良いだろうなぁ。
ニューウイングの吉田さん( ニューウイング吉田 (@newwingyoshida) | Twitter)がちらっと示唆的に呟いていらっしゃいましたが、
熱波師の扇いだ風がお客さんに向いてるのか自分に向いてるのかぐらいは簡単にわかるよこっちは裸だからね
というのはやっぱりそうで、風を浴びるとわかること、というのは少なくないなと思います。
五塔熱子さん
五塔 熱子 (@2525netsuko) | Twitter
熱子さんの風を初めて受けたのは、第1期サ道が終わって間もない頃、草加健康センターの木曜日のレディースデーの夜だったと思います。
まだコロナの不安がなくて自由に生活を楽しめた頃、草加健康センターは木曜日をレディースデーとして様々な特典を受けられる日に設定していて、熱子さんの熱波もその特典の1つでした。
その頃の熱子さんの熱波は今と比べるとおそらく荒削りで、パフォーマンスを見せるかどうか迷っていたように見えました。
その日はたまたま終わりの方で、“湯らっくすの福永さんの動画で見た技を練習したので…”といって披露してくださった技に熱さ*7や女性的な柔らかさと美しさがあって、魅せるアウフグースの可能性を感じました。
その日サ道を見て初めてサウナに来て偶然やっていた熱波も受けたというお客さんに、”サ道もいいけど湯遊ワンダーランドがイチオシです!“とオススメしていた姿を見て、あ、この人ほんとに温浴が好きなんだなぁと思ったのを覚えています。
その後2度ほど熱子さん熱波を受けましたが、その日のお客さんやサウナの空気によって趣向が違っていて、”型がない”というのは本当だろうと思います。
女性サウナでパフォーマンスする時には、”女性がサウナの良さを知らないと女性熱波師は増えないので“といって熱波師の勧誘をしているのが印象的でした。
ニューウイングでは普通にサウナを楽しむサウナーとしての顔を見て、熱波師さんも熱波師である前にサウナーなんだな、と当たり前のことに思い至りました。
鳥取に行かれたのは地域おこし協力隊だったのですね。
ご結婚されたばっかだったので、単身でなんで鳥取?と思っていたのですが、そのあたりのことも本に書かれたので色々合点がいきました。
時々スペースでご夫君がお話しされてるのをきいているのですが、逆風を切り開いていく熱子さんを信頼しているのだな、というのが端々から伝わってきて、とても素敵だな、と思って聴いています。
女性サウナはまだまだ発展途上で、実際のところどうなっていくのか未知数ですが、熱子さんの蒔いている種はいつかきっと発芽して大きくなっていくと思います。
井上勝正さん
サウナそのもの 井上 勝正~ 至極の熱波道 ~ (@307inoue) | Twitter
熱波師について語るなら最後は井上さんだと思うので、この順番はとても納得がいきます。
サウナ皇帝時代から見ていた井上勝正さんは、土曜日のおふろの国に行くと大体いつもおふろの国の入口付近や食堂に立っていらっしゃる謎に熱狂的な信者の多い熱波をやっているおふろの国の看板の人、というイメージでした。
Twitterなどは時折見ていたのですが、言葉が独特でとっつきにくく、また実際に施設で目にすると威圧感があってなんとなく腰が引けてしまい、いつも遠巻きに、あ、今日もいらっしゃるな、と眺めるに留めていました。
だからヨモギダさんが冒頭に書いていたことはちょっとわかります。
自分のなかで井上さんの見方が変わったのは、女性OL熱波師の宮川はなこ( 宮川はなこ|OL熱波師🐨🎂💜 (@hanako_miyakawa) | Twitter)さんというお弟子さんができてからです。*8
その頃(2019年頃)、おふろの国の女湯では平日も定期的にやっていたスタッフ熱波がなくなって、その代わりに毎週土曜日の決まった専属熱波師が熱波をするシステムになりました。
そこで登場したのがはなこさんなんですが、毎週土曜日は男湯では井上さんのアシスタントとして、女湯では1人で熱波を送っていました。
それで女湯熱波の口上の時に、しょっちゅうはなこさんから
“今日の井上勝正はこういうことを言っていて…”
とか、
”自分は熱波の時に水を飲め、汗をかけ、汗かかないと熱波できない、と言うのは井上勝正も言っていることであって、これこれこう言う理由で…”
っていう話をよくしてくれるのです。
それをきいていて、あ、もしかして私の井上さんに対する印象って本質とは違ってるのかも…!って感じたのです。
はなこさんと“女子も井上さん熱波受けたいよねー!”って話をしていたら、念願かなって女性向けに熱波をやってくださる機会があったので、受けてみたらかなり印象が変わりました。
実際に受けてみると、まあ口上は長いんですが、紳士だし、説明してくれることがひとつひとつなるほど!って思うことだし、めちゃくちゃ焼き尽くしてくれるし、極限だから“熱い”くらいしか考えられなくなって、あれは本当にすごかったです。
おもしろい体験でした。
パフォーマンス自体は意味わからないことが多いけど、結果的に理にかなってる。
そして井上さんの熱波自体はシンプルです。
男性は直接風を受けてるから誤解も少ないと思うのですが、なんとなく女性が井上さんを遠巻きにしがちなのはその辺にあるのかもしれません。
井上さんすごいな、と思ったのは、熱ッスルマニア4で関西からやって来たいいだ。(素面のいいだ。 (@Aufguss_iida) | Twitter)さんとの試合で、
“俺はこのスタイルでずっと熱波をやってきたんだよ!!”
って叫んでいて、それがあまりにも自然で熱が籠っていて心を打たれました。
他の誰が同じこと言っても、重みが全然違っちゃう。
井上さんだから響くのだろうと感じます。
土日のおふろの国では入口とかフロアとか食堂にフツーに熱波師さんがいらして働いていたり、お話ししたりできるので、もしまだおふろの国で熱波を受けたことがない方がいたら、土日に行くことをお勧めします。
熱波師は生きるため、お子さんを育てるためにやっている、というのはとても井上さんらしい答えだな、と思いました。
望月義尚さん
望月 義尚|温浴コンサルタント@アクトパス (@spamochi) | Twitter
最後の章をコンサルタントの方にしたのはとてもおもしろいですね。
業界の人ではあるけど現場の人間ではない方の視点は、新たな発見が沢山あります。
Twitterでアイコンはお見かけしたことがあって、温浴業界のコンサル、と書かれていたのでサウナ王と同じようなことしてる人って他にもいるのだな、温浴業界の仕事も幅広いな…と思った覚えがあります。
この章では、ロウリュという言葉がいつ持ち込まれて、どのように広がっていったのかということや、遠赤外線サウナでもロウリュできるようにするためのポータブル蒸気発生装置を売っていた話、ロウリュ導入に全国の施設でコンサルした話など、どのようにして今日のロウリュサービスが広がっていったのかを丁寧に書かれていて、バックグラウンドを知るとともに、初期の頃からロウリュを導入している施設のいくつかは今のこの流れの中核に位置する施設も多くあり、そういうことだったのか、と理解できました。
また後半部分では、熱波師への期待と役割、その周辺のシステムまわりの話や熱波師が今後どうなっていくかという未来の話、お客さん側の技術、温浴施設の従業員の地位向上や業界の今後の課題など内容が多岐に渡っていて、コンサルタントならではの視点で課題や将来への展望など、外から眺めた時の“温浴業界”が描き出されていて、とてもおもしろかったです。
現状二分化している地域密着型のサウナと観光地サウナの話については、大都市圏の観光地サウナは放っておけばそれでいいのかなという気がするのですが、地方のサウナはうまく地域おこしと繋がっていってくれたらもっと幅が広がりそうだなぁ、と感じるところもあり、熱子さんの行かれたnature saunaなんかはもしかしたらそういったサウナのはしりなのかもしれないなと思いました。
もうあるのかもしれませんが、サウナは今後観光資源になるのかもしれません。
考察について
ここでは、熱波師とコンサルタントの望月さんに話を聞いた上で、ヨモギダさんが独自に熱波師についてと温浴業界の現在〜将来にかけての話がまとめられています。
事前にスペースでお話されていたところでは、序章と考察がかなりのボリュームになり、仕方なく序章を削ったとおっしゃっていました。
熱波師に必要なことや、サウナ室の外でのパフォーマンスが評価されることなどが書かれており、ぜひこのあたりは現役熱波師のみなさまやこれから熱波師になりたい方々にご一読願いたいと思った部分。
サウナ室でのパフォーマンスは、時々受けにいく私の目から見ると、
・どこ(誰)に向かってる風なのか
・ここでの主役は熱波師なのか風なのか客なのか、
・緊張や真剣さ
・熱波師が意図している部分
というのはやっぱり伝わってくるし、お客さん側もそれによって全然場の空気が変わるところでもあるな、と感じています。
サウナは基本裸かそれに近いからセンサーが敏感だし、反応もダイレクトです。
またここで言うところの「熱波ファン」と「熱波師ファン」は別物、というのも納得感があるところです。
最近は「推し」*9熱波師を表明している方もいる通り、それぞれの熱波師さんについてるファンも多いです。
私自身はここでいう「熱波ファン」に分類されるかと思います。
有名人の参入や、本場がいいのか?ということ、熱波の有料化について、客側のレベルアップが求められること、温浴業界のマナー問題やタトゥー/刺青についてなど疑問や課題についてもバランスよく書かれていて、現状を知る手がかりとしてよくまとまっているなと思いました。
“お客さん”を考えた時に、客側が日本での日常生活で”良い客である“ということを意識させられる機会はあまりないと思うのですが、本当はサービスをする側が受ける人を選べるし、お客さん側は選ばれる側で、“良い客”の立居振る舞い振いがいちばん難しい、というのは心に留めておきたいところです。*10
熱波はやはり、ローカライズ/グローバライズだったり、熱波パフォーマンスやアウフグース、ショーアウフグースや日常生活に密着するものなど多様化していくのだろうと思われます。
将来年をとってから気軽に熱波を受けに行けるくらいの環境になって欲しいので、一過性のブームではなく様々な形で、進化していくサウナカルチャーとともに定着していって欲しいな、と願っております。
最後の「熱波師とは何か?」という問いの答えは、ぜひ読んでもらいたいと思う部分です。
終わりに
熱波師の本が出る、ときいて、おー熱波師本が出るのか!それは買わなくては!と思うくらいには熱波やアウフグースが好きな私。
そこまで沼にハマりこむきっかけは、2020年11月に東名厚木健康センターで開催されていた“ロウリュ強化月間”でした。
首都圏ではそれなりに熱波イベントをやっている施設が多い、とは言ってもそれは男性の話。
女性サウナはまだまだ未発展なところが多く、コロナ禍で熱波サービスはさらに減り、恒常的に女性が熱波パフォーマンスを受けられる施設は、湯の泉グループ(草加、東名厚木)とおふろの国、スカイスパ、庭の湯、天然温泉平和島くらいしかなく、かなり限られているのが現状です。*11
そんななか東名厚木健康センターでは女性熱波師が多く集まったのもそうですし*12、“女性も熱い男性熱波師の熱波/アウフグース受けたいよね〜!”という話をロウリュウ姉妹とSSKさんが拾ってくださり、せっかくだから…、ということで最後の金曜日と土曜日の一般のお客さんの邪魔にならない深夜12:00に、水着着用を条件に九州から来た2人の男性アウフギーサーのアウフグースを受けられる枠を設けてくれました。
それがサウナサンの支配人足立さん( サウナアディクション2 (@saunasan0616) | Twitter)と、湯らっくすに所属するヤング熱波師チャンピオンの福永さん( 湯らっくす♨️(フロア)福永 (@aufgiesser2143) | Twitter)でした。
残念ながら両方には出られなかったのですが、金曜日夜の足立さんの回に参加することができました。
その夜は、今思い返しても特別な夜で、深夜のサウナ室に熱いサウナが大好きな女性が16人くらい?集まって壮観でした。
施設もアウフギーサーも企画段階では本当に深夜に人が来るのか…、と心配な部分もあったと思うんです。
でも集まった。
そして、たぶんその集まった女性たちに、足立さんは敬意を表してくれたのだと思います。
その時のアウフグースは、ほんとうに熱くて…。
あまりの熱さに、一旦出たいです…!って誰かが言ったら、
“1回しかやらないからね、再入場はダメ。”
”女性の方が熱耐性が強い、ってきいたから。“
と言って、キューゲル*13を落とした後にサウナサンでスタッフの松村さん( サウナ調香人🌿松村 (@ichimarusanmaru) | Twitter)が蒸留しているというスターアニスのアロマ水をジャージャーストーブにかけてめちゃくちゃサウナ室が熱くなって…。
最後に残ったアロマ水を全部かけていってくれるおまけ付き。
厚木のサウナ室ってこんなに熱くなるんだな、ってびっくりしました。
女性って、日常生活では息をするようにビジネスパーソンの顔や母の顔、妻、娘、嫁、恋人、女…etcの顔を常に使い分けていて、時々ほんとうの自分がわからなくなることがあるんです。
でもこの夜は、ただただ熱く気持ちいい、という感覚だけがあって、夜の深層に強制的に落とされていつも使い分けている顔をひっぺがされ、水風呂で長い時間冷やされた後にやってくる快感が”なんの役割も背負ってない自分“に戻してくれるという不思議な体験でした。
キューゲルを使って熱や蒸気の質にこだわったり、アロマに力を入れるとここまで感覚が変わるんだな、という3段階くらい違うサウナを体験して、熱波やアウフグースというものに対しての視点が全く変わった原体験です。
足立さんの力強いランバージャックとタオル捌きはただただ美しく、艶やかさに魅了されました。
企画をしてくださったロウリュウ姉妹( 湯乃泉🦦ロウリュウ姉妹 (@yunoizumisauna) | Twitter)、SSKさん( 湯乃泉サ守🦦SSK🦦@ラッコサウナ部(仮)補欠 (@SSK1206aka) | Twitter)、湯の泉グループの方々、そして深夜に熱さで真っ赤になりながら仰いで下さった足立さん、ほんとうにどうもありがとうございました。
ここだけの話、この企画で男性だったら受けてみたかったのは、OYUGIWAのシダさん( シダトモヒロ (@bikke4126) | Twitter)とニューウイングの吉田さんの伝説の回です…🤫
何そのレジェンド級×2…!
またここ2、3年で女性サウナは随分と治安が良くなりました。
まだまだ我が物としてサウナを扱う”ヌシ“も遭遇することはあるのですが、やばいヌシとの遭遇率は激減し、サウナ室のドアのタオルばさみを見かけることはほとんどなくなりました。
これは客層が入れ替わったのもあると思いますが、ひとえに現場にスタッフさんの頑張りと施設に所属している熱波師さんのおかげだと思います。
施設に所属する熱波師やスタッフさんがいるサウナで、表立っては出てこないプロ客に近いお客さんがいる場合、そういうサウナはどこも抜群に良いのです。
熱波師/アウフギーサーには、マナーの向上を誘導する役割もあるのだと思います。
骨が折れる作業で、いつも頭が下がります。
それから最後に、地方サウナの話を。
在りし日のスパ・アルプスで、運良く簡易のロウリュサービスを受けられた日。
サウナ室には地元の常連さんと私の2人しかいないのに、ジャージャーアロマ水をかけてバキバキにサウナ室を熱くしてくださったスタッフのお姉さん。
今日は人が少ないからね、と言ってこっそり10回も仰いでくださってありがとうございました。
ストーブの調子がイマイチなのかいつもより熱くない、と常連さんと2人でおっしゃってましたが、大丈夫です…、充分熱かったです!!
アルプスのサウナ室については湿度が増すとどうなるのかは興味津々だったこともあり、結果がわかってとても楽しかったのと、とても気持ち良く、いい思い出になりました。
コロナ禍が落ち着いたら、大手を振って遊びに行きたいです。
最後になりましたが、温浴業界と熱波師のさらなる発展を願っております。
*足立さんのアウフグースを受けた話と、井上さんの熱波を受けた話はRadiotalkでも配信していますので、よかったらきいてみてください。
【足立さんアウフグースの回】
【井上さん熱波の回】
*1:未だに自身をサウナーって表現するの若干の違和感があります。
*2:他にニューウイングの吉田さんもあまり熱波が好きではないと耳にしたことがあります。
*3:だから本書にそう書いてあってのを読んだ時にやっぱりな、と思いました。
*4:Aufguss Professional Team/箸休めサトシさん、五塔熱子さんをはじめとするプロのアウフギーサーで構成されるアウフグースチーム
*5:そういった経験は大人への通過儀礼としてあったほうがいいと思いますが、今の世の中は失敗する難しさが格段にあがっており、失敗した場合のリスクが大きくて大変だなと思っています。
*6:いわゆるプロランナーの存在はここ10年で増えました。
*7:攪拌による物理的なもの
*8:見習いは1年で卒業して、現在は熱波師さんとしてご活躍されています。
*9:アイドルなどでは良く使われる表現です
*10:レストラン案内される席などはお店が見せたい光景になるように窓側席のお客さんを配置したりしますよね。
*11:追記)川崎ゆいるができたり、3と7がつく日のOYUGIWAでも受けられましたね!
*13:クラッシュアイスの塊