天気:晴れ
睡眠:良好
起床:9:00(行動開始は12:00)
体調:そこそこ良好
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今日は先日の本の感想の続き。
村上春樹の作品はほぼ読んできているけれど、唯一、長編で今まで読んでこなかったものだ。
敬遠していた理由はいくつかある。
- ノンフィクションであること。(彼の作品は基本的には小説とかエッセイとかの形式が私の好み。)
- 題材が明るくないこと
- 実は結構身近にこの電車に乗っていた人が知り合いの知り合いくらいにいたりすること(なのであまり・・・)
- なんとなくいやな感じがあったこと
とにかく、そんな理由で今まで手にすることを避けてきた。
小説自体を読むというのも割と久しぶりなのだけど(そういえば直近では出光のやつ読みましたが。)、何を思ったか、まあ時間もたっぷりあるし、時間のあるうちに読んでおこうと思ってBOOK OFFで手に取った。
本を読むのは割と早い方なのだけど、内容がやはり重たいからか、読み終わるまでに4日かかった。
読んでは途中でやめて、途中で休んではまた読んで・・・。
そんな感じを繰り返しながら読み続けた。
事件自体はかれこれ20年くらい前の話。
もうそんなに前なのか。
1995年〜1999年くらいまでというのは、当時私は小学校高学年〜中学校へ進学しようかという年齢だった。
体感として、とにかく忘れがたいくらい暗くて重い時代の空気感というのを覚えている。
ショッキングな事件がいくつも起こって(阪神大震災、地下鉄サリン事件、神戸の殺人事件、ダイアナ妃の事故死、山一・拓銀の破綻、リストラの横行・・・など)、価値観を揺さぶられるような感じだった(んじゃないかと思う)。
ちょうど受験と重なったからか、このあたりの出来事は時事問題の出題範囲だったので、解けたかどうかはともかくとして、体感としてかなり鮮明に記憶にある。
名称とか質問されて間違った可能性は高い・・・笑。ちゃんと記憶するのは昔から得意じゃなくて、だいたいざっくりしか覚えていないから結構苦労した気がする。
1ドルが90円代だったのが、半年後におんなじテストで120円代くらいになったのとかは結構ショックがあったので覚えている。
そういった重苦しい空気感も薄れてきているような感じがして、変な話、今が読みどきかな、という印象をもった。
内容は、当時の地下鉄サリン事件を解説(というと変な気もするけれど)するとともに、それぞれの電車に乗り合わせた方でインタビューに応じてくださった方の話をまとめて、一人一人の話がたくさん載っている。
重傷の方もいらっしゃれば、軽傷の方もいらっしゃっり、自分なんかが、という方も多かったと書いてある。
涙なしには読めない、という感じのはなしはあまりない。
どちらかというと淡々としていて、その内容からそのとき起こったこと、その方の人生の核みたいなものが浮かび上がってくる物語の集積。
一番印象に残ったのは、一番始めに載っている女性の話。
元鉄道会社に勤めていて、その後転職し、通勤時に被害にあわれたという方だった。
年齢が近いからかもしれない。
会社は合わなかったけれど、職業倫理が身に付いていて、まさにその場で発揮された、という感じを受ける。
私個人も、そういう感じを抱くことがここのところあって、まあ会社は合わない気がするけど、いろいろな職種の人が集まる場で何かしようとすると、自然とそういう役柄が回ってくるし、職種をきかれて答えると、「ああ!(わかる)」という反応が戻ってくる。
そういう場で、自身がきちんと動けるかは自信がないけれど。
本で問題提起されていること(社会のシステム不全、非常事態の時の現場と政府の動き方、その後被害者の方のケアなど)、心療内科からの視線、松本サリン事件での現場で救命にあたったお医者様の話、弁護士の話など多方面からのお話も書いてある。
そして、それは、約20年経った今でもあまり変わっていないと思いながら後半読み進めることになった。
社会というのはすぐに変化が起こるものではないし、大きい組織ほど変えていくことはとても大変なことだ。
ただ、自分が信じているものが(人生とか。オウム心理教は読み進めていくとエリートが多いと書かれている。)ぽきんと折れたとき、そこから変更していくことを受け入れる場所というのがあまりにも少ないのは、今も昔も同じ気がする。
その受け皿が、そういう宗教しかなかったということは、残念だと思う。
ようやくその事に世の中が気がつき始めたのか、最近、草の根レベルでそういう受け皿を作っていく感じがうまれてきているように感じられるので、それは救いがある、と思う。
事件後、やはり後遺症が残り、社会復帰が難しかった方もいらっしゃったことを書かれている。
事件について、インタビューを受け、こうして世の中に出してくださった皆様の勇気を、とても尊敬します。
現在、読了後、なんとなくひっかかる感じが残って、「アンダーグラウンド2」を読み進めている。
教団側に関わる方(で事件に関わっていない方)のインタビューがされていて、同じようにいくつもの物語が集積している形です。
表裏一体、というような感じもして、少し社会に適応不全を起こして、いろいろ宗教を研究し、行き着いた先がそこだったということが多いようです。
日々の中で、社会から弾き出されることに突然あう可能性は、誰にでもゼロではないと思います。
時間はかかるけれど、そういうはみ出しても生きていける生き方を模索しながら進んでいくことが、今、現代社会で少しずつ起こっているように思います。
多様性ということが社会でスローガンになり始めてから結構な時間が経った気がしますが、まだまだ先は長そうです。
お互いに、尊重しながら生きられる世の中を作っていけるように、努力していきたいと思います。