(勝手に)アドベントカレンダー前夜 ”愛と情熱とカオスの銭湯サウナ”

 

愛と情熱とカオスの銭湯サウナのはなし

 

前置き

サウナイキタイ、というサイトで毎年サウナに纏わる文章を毎日掲載していくアドベントカレンダーという企画があります。

 

sauna-ikitai.com

 

よくよく考えると、毎年眺めていただけで今後も眺めてるだけで十分かなぁ、と思っていたのですが、応募してみたらいいんじゃないか、と言われてめずらしくやる気を出して応募したものの応募者多数で抽選に漏れまして。

うん、ちょっと凹みました。

なぜかと言われると難しいですが、このテーマは昨今の感じからいくと需要がなさそうなので無理だろうな、と思ってはいたのでしゃーないな、とは思います。*1

来年…は応募するのは厳しそう....。

 

さりとて私は今年しか纏まった文章は書けなかったと思うので*2これはお蔵入りにしようかな…とも思ったのです。

運も今回はなかったし。

なんだかんだで、最近のサ活には大体のことが書かれ尽くしてるからもう書かなくてもいいかな…、と感じることも増えました。

文章を書くのはしんどくて、でもまだ書きたいという気持ちや葛藤もある。

一書くことが好きなんでしょうね、たぶん。

無理矢理、ガムシャラに書いたものの多くは大して読まれないだろうな、とは思うのですが、つい書いてしまうのが性分というやつですね。

 

 

 

 

これでほんとにしんどかった今年の一区切り。

今年はずいぶん長い文章を沢山書き、また昔よりはいろんな人に読まれた気がします。

内容はしんどいものが多くて読む人も大変だよな、と思いつつ。

今の空気をぎゅっと閉じ込めたような、そんな文章が多くなりました。

 

書くかどうか、とか、

書いたところでアップするかどうか、とか、

いろいろ考えたんですけど。

 

読みたい、と言ってくれた人にただただ届けたくて書きました。

いつも私は読んでくれる人を不思議とイメージできるから、大してアクセスがなくてもずっと書いてこられている気がします。

 

読んでくださったりスターをくださるみなさま、いつもありがとうございます。

 

 

ブーム前夜

まだこんなにサウナがブームになる前の頃。

とは言ってもそんなに前の話じゃない。

ほんの3、4年くらい前のこと。*3

 

私はその頃、銭湯サウナによく通っていた。

何故か、といわれると理由は簡単で。

手軽で週2回くらい行く分にはそんなにお金がかからず時間も潰せるちょうどいい趣味だったから。

睡眠はぐだぐだに悪く、どうにもならないくらい行き詰まっていた。

手当たり次第睡眠を安定させるために試したうちの1つが交互浴で、交互浴とサウナはどうにもならなかった私の睡眠を、低空飛行ではあるもののそれなりに安定させた。

 

 

友人の多くは仕事や子育てで忙しくて、人生の必要なポイントをどんどん進めているように見えた。

自身は働こうにもまだフルで働けるような気力体力の回復には程遠く、かと言って子どもを育てているわけでもなく、1人ぽつんと取り残されている感じがした。

会おうと思えばいくらでも子育てしてる友達とは会えた。

ただ会う時には必然的にお子さんがご一緒になるので、でもそれは自分が子供を産まず子育てしていない現状と向き合わなければいけなくて、自分にとってはとてもしんどいことだったので逃げ続けた。

気楽に会える人はほとんどいない。

そして人と会いたくない。

また気分転換に現況から逃げ出そうにも、1人で遠出するのにはいろいろなことのハードルが高すぎた。

自分が人生のチェックポイントみたいなものを進めたりクリアできたりするようには到底思えず、ただただ孤独だった気がする。

気力も体力も安定せず、生きているのがしんどかった。

 

 

そんな中で救いだったのは、遠くはないところにいくつか有名な銭湯があって、通う銭湯には困らなかったことだ。

そのうちの一つが萩の湯。

リニューアルしたばかりで様々なお客さんが来ていてた。

ガヤガヤしていた雑音をききながらお風呂に入っていると、気が紛れた。

やってくる圧倒的多数はふつうの普段使いのお客さん。

そして時々成田からの交通の便と宿泊施設の安さと利便性からか割と海外の観光客も来ていて、なかには揉め事もあったがたまに入ってきては日本の銭湯文化を楽しんだりしていて、なかなかおもしろい空間だった。

 

セイントセントー

あるとき水風呂のところに漫画が張り出された。

東上野の寿湯、鶯谷の萩の湯、向島の薬師湯でだけ読める、とある。

セイントセントーである。

どうやら、毎月連載するらしい。

萩の湯はよく来ていたので、まあ続けて読めるだろう、と思ってサウナと水風呂の合間に時々立ち止まって読んでいた。

それで、初めて薬師湯の存在を知った。

寿湯と萩の湯は兄弟でやっている、というのは元々知っていたのだけど、薬師湯の存在はこれを見て、もう一軒あるのか、と思った。

いちばん上のお兄さんがやっている(ご実家らしい)、と知って、俄然興味が湧いた。

つい癖みたいなもので、そういう関連を知るとつい、まわりたくなってしまう。

ただ一軒だけ少し遠くのスカイツリーのふもとにあったので、しばらく足踏みしていたのだが、思い切って入りにいった。

真冬のことだったと思う。

 

薬師湯

ひだまりの泉萩の湯 | JR鶯谷駅北口徒歩3分の都内最大級公衆浴場

台東区東上野寿湯

 

 

薬師湯

今でこそ墨田区の銭湯サウナというと、サウナ施設顔負けの黄金湯にオールナイト営業の大黒湯、セルフロウリュの激アツサウナと冷たい水風呂の寺島浴場、暴走ミストサウナが噂の松の湯、若い4代目とその周辺に集まってくる若くておもしろい人たちが営業している電気湯など、サウナ界隈でも話題に事欠かない多彩な顔ぶれだが、このときはサウナが話題になっている銭湯はあまり多くなかったと思う。*4

そのなかで、薬師湯は異彩を放っていた。

その頃からTVやメディアにはちょくちょく登場していて、そういうのに協力的な銭湯だったのだと思う。

 

初めて来ると、その不思議な空間にたぶん戸惑う。

なにせ入口からBGMがかかっている。

が、そこからしてやばい。

薬師湯ワールド全開である。

なんの曲だと思います?

 

答えは、OFR48の「お客様はハダカです」。

 


www.youtube.com

 

OFR48、知ってます?

おふろ屋さんで働くアイドルグループなんです。

噂によると鶴見のおふろの国の店長が仕掛け人らしい、のですが、まあそれはさて置くとして。

この曲、危険なのは何度も聴いてるとつい口ずさんで入ってしまうのですよ…。

入っていってしゅーぞーさん*5がいらっしゃるときだったりすると、

はっ…∑(゚Д゚)( ꒪⌓꒪)

ってなります。ほんと。

 

そして下足箱に靴を入れて入っていくと、出迎えてくれるのは薬師湯グッズやいろんなイベントコラボTシャツ、そして酉の市の熊手。

私のオススメグッズは入浴剤です。

ここの入浴剤ね、ひと味もふた味も違うので見かけたらお土産にぜひゲットしてくださいね!

 

少し奥にはTVやソファやテーブルが配置してあって、知ってる人の家に遊びにきたような安心感のある空間が広がる。

コロナ禍ではちょっと難しいけど、ここに来るとビールや塚田牛乳の甘さ控えめなフルーツ牛乳*6やキンキンに冷えた缶ビールを飲んでダラダラしたり、漫画を読んだり、テーブル下に置いてある千夜十夜着想記を読んだり*7、TVのニュースをぼーっと眺めたりして、もういいかなって満足した頃に帰る。

そういう適当で多少雑な感じで、放っておいてくれて、でも居てもいい場所、ってなかなかないから。

だから私はあそこが好きなのです。

 

お風呂とサウナと水風呂

メインの浴槽は毎日変わる薬湯。

いちばん有名なのは、一定の時間ごとにお風呂の色が変わるスカイツリー風呂(粋と雅の2パターンある)ですが、ほかにも様々なテーマに沿っていろいろなお風呂が毎日楽しめます。

最近のいちばんのヒットはスパークリングワイン風呂。

あのですね、まじで、ガチで、スパークリングワインをめっちゃ振っておふろでポーン、とやって湯船にワインを入れるんです。

あれはハレの日のイベントにやっていて本当に面白い。

千夜十夜着想記の千夜十夜の湯のイベントで登場したお風呂ですが、今も時々登場します。

前回の千夜十夜の湯は国めぐりで、今年は星座でした。

それからよくやっているのはプロ野球Jリーグのお湯、日本昔ばなしやお料理の湯など。

ちょっとほかのお風呂屋さんではみたことのないような多彩なお風呂が毎日楽しめます。

しゅーぞーさんの人を喜ばせるお風呂はいつ行っても本当に面白くて、機会があったらぜひぜひ入りにきて欲しいです。

ちなみにこのお風呂、麦飯石で濾過されてるので、ちょっとお湯自体がやわらかいんですよ!

 

そしてサウナ。

コンパクトなサウナ室なのに、でかい遠赤外線ストーブがどーんとあって。

2段座るところがあって、どっちも座るスペースが広くて楽に座れる。

上段は天井が近いので、上の方だと100度になる。

今でこそ、そこそこ女湯サウナにもこの温度設定が増えてきたのですが、この頃はそんなに高温になる女湯サウナがめずらしくて。

TVなし&80sくらいのJ-POPや洋楽が流れているアツアツのサウナは、一瞬で私を虜にした。

ここのサウナは、当たり前だけどヌシみたいな人がはいないわけではない。

行くとよく見かける顔、というのは何人か思いつく。

ヌシかというとそうでもないな、とおもうけど。

不思議とここのサウナで入っていて納得がいかないことやなんだかなぁ、と思うシーンに出くわしたことはない。

なぜならみんな放っておいてくれるから。

下町のウェットなのにドライな距離感がなんだかんだで心地よい。

話かけられることはあるけど、巻き込まれることはない。

それはわたしが他所者なことがわかっているから、というのと、他の銭湯ユーザーであることがなんとなくわかるからだろう、と勝手に予測している。

 

そして奥まったところにある水風呂。

半分外みたいなところにあるので、季節によって水温が揺れる。

最近は人の出入りも多いから18ー25度くらいで推移してると思うけど、初めて行った時は16度。

冬で外が寒かったのと、今ほど人の出入りがなかったのもあるのかもしれない。

100度ー16度みたいなキツめの組み合わせは入ったことがなかったので、サウナと水風呂を往復するだけでただただ気持ちよかった。

あまり私はうたせ水をやらないのだけど、実はここの水風呂は打たせ水もできる。

水風呂の蛇口を捻ると頭から水を浴びられるのだ。

機会があったら試してほしい。

なんなら湯船の組み合わせによっては水風呂にも入浴剤が入っていたりする。

そういう遊び心、本当好き。

普通水風呂には入浴剤入れないですよ…!

 

 

お気に入りのオレンジの休憩椅子

そして薬師湯いつもすごいな好きだな、と思うのは、どんどん進化していくし、サウナ好きに大々的にではなくそっと寄せてくれるのです。

中でも嬉しかったのは、休憩椅子が2脚置かれたことと、サウナでてすぐにところにサウナハット掛けを作ってくれたこと。

おかげでここのサウナではこの辺の銭湯サウナにしかこなさそうな常連さんもサウナハットを被っています。

なんかあの光景を見た時には思わずくすっと笑ってしまいましたよね。

椅子は薬師湯っぽくオレンジ色の休憩椅子。

浴室利用者のあまり邪魔にならないところにそっと置いてくれて、すっかりお気に入りになりました。

 

特に今まで言及したことがないのですが、私が休憩椅子に求めることは2つあって。

1つは、座った時にお尻の位置に水切り穴が空いてること。*8

もう1つは、椅子の色が施設にマッチしてること。

実はあの椅子、カラーバリエーションがあって密かにセンスが問われるなぁと思っているのですが、自分の好きな施設は絶対にあの椅子が施設にマッチしたカラーになっていて、実際に座った記憶がかなり鮮明に脳裏に残るので密かにあの椅子の色はつい見てしまいます。

 

いくつか記憶に刻まれている椅子があるのですが、それは在りし日の夏の昼に座った相模健康センターの深緑の椅子や*9、おふろの国で座る場所をつい選んでしまうカラーバリエーションに富んだ休憩椅子、夜のニューウイングで座った換気ドアそばの赤い椅子や、早朝の東名厚木健康センターで露天の隙間から見える東名高速に想いを馳せながら座った頭の部分を改良した白い休憩椅子だったりします。

そういう特徴的な椅子は、ほんとうに記憶に残るのですが、薬師湯のオレンジの椅子はやっぱりそのタイプの椅子で。

一目見た時、あー、薬師湯っぽい!と思いました。

そして座ってみてとても好きになりました。

水風呂の端に置いてあって、浴室を見渡せて。座るとなんかホッとする椅子なのです。

 

千夜十夜着想記

そして最近の薬師湯の特徴は、おふろの壁に貼ってある読み物の多さ。

ここ2年くらいで急速に増えました。

以前は写真中心の薬師湯しんぶん*10とセイントセントー、近隣施設の広告があったのですが、最近は2年ほど前からそれに加わった千夜十夜着想記が密かに人気を博しています。

YouSay (@Ux09) | Twitter さん、という方が書いている長文の(大体3000〜5000字くらい?)読み物なのですが、毎月様々なテーマに沿って書かれていて。

これがつい読まされてしまうのです。

行って読んでからのおたのしみ、なのですが、千夜十夜着想記はね、キレッキレなんですよ、毎回。

一生懸命生きてきた大人にはたぶん刺さるポイントが多くて。

読みながら、がんばれ!若人…!って思ったり、身に覚えのある感覚に思わずくすっとなってしまったり。

続きが読みたくて、ついつい長湯長サウナになってしまいます。

休憩スペースのテーブルにも置いてあるので、行かれた時にはぜひ手に取ってみてくださいね。

 

 

千夜十夜着想記はたくさん読んできてるけど、初期のころに書かれた「引き算のマジック」が私はいちばんすきです。

薬師湯の造りや魅力が存分に書かれていて、ここの魅力が雄弁に伝わってくるので読んでみてほしいです。

 

 

終わりに

アドベントカレンダー、応募したんだけど書こうとしてるやつではたぶん通らないだろうな、って思ってました。

毎年読んでるけど、ふだんは参加できるほど書いてる時間がなくて、いつか時間ができたら応募しようかな、と思っていたら今年は諸事情で時間ができてそっと背中を押してもらったので。

 

来年以降は纏まったものを書くのは難しいんじゃないかなと思っていて、たぶん今しか書けなかったので、こういう形で私のいちばん好きな銭湯サウナの話を書きました。

 

何度か薬師湯の話は書いているのですが、なかなかいつもうまく書けなくて。

今回初めてこういう風に書けたかなと思います。

薬師湯はひみつの心の逃げ場です。

AM2:00の深夜帯まで営業してくれてるのは、ふと色んなことから逃げ出したくなる自分としては、そこが深夜にやってることを知っていることがすごく救いになるのです。

万が一の時に駆け込む場所。

 

そういう逃げ場をいくつか確保することは、東京という狂った街で生きていくために必要なことだと思っていて。

ほんとにいつも深夜まで営業されていることに感謝しています。

そういう夜のはざまにいられる場所がいくつか点在しているのは東京のいいところだな、と思っていたのですが、コロナですっかり難しくなってしまいましたね。

 

いつも本当に感謝していて、ずっと好きです。

墨田区の施設、深夜に入りたくなる施設が多くて。

たぶん相性とか、波長が合うというのはこういうことなのだと勝手に思っています。

 

おふろとサウナに愛を込めて。

東京でいちばん好きな銭湯サウナです。

 


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*1:東京の施設をテーマにした話は山ほどくるでしょうしね。

*2:そうだったらいいな、という希望的観測でもあります。

*3:けっこうTwitterやってるのに友達とか知り合いを作るの、ほんと下手くそだ。

*4:他に墨田区には高砂湯、さくら湯、中川湯などの銭湯サウナがあります。

*5:東京の銭湯業界では知らない人がいないのではないかと思うくらい有名な長沼3兄弟のいちばん上のお兄さん

*6:これ、新潟の会社のやつなんですが、東京ではほとんど見かけないらしいレアなやつなんです!

*7:これは浴室にも貼ってありますが、ここにはバックナンバーが置いてあるのです。

*8:これはこの穴があるやつとないやつだと水やお湯を流しかけた時の利便性が違うのです。

*9:あれは絶対に深緑だったのが絶妙によかった!

*10:萩の湯と寿湯にもこのおふろ新聞はあって、萩の湯がいちばんお便りっぽいです。