【湯活】Oct 10'22 殿上湯

昼間は、TVで出雲駅伝を観ていた。

駅伝オタクのTLをのぞいていると、どうやら中央と國學院が今年は揃っているらしいことが目に入ってくる。

事前のエントリーから見て全力とは言い難い青山学院のエントリーは、遅くはないのだろうけど、調整なのかはたまた現状しんどい状況なのか傍目にはわからなかった。

駒澤は事前に鈴木芽吹が登録されたと知って、一筋縄ではいかなそうだな、とチラリと思う。

 

 

そんな予測はともかく、レースはえらい高速レースが展開された。

出雲はそもそも距離が短いので高速レースが展開されがちなのだが、それにしてもどの区間区間新かそれに迫る記録で走ってくる。

つまり例年よりどの区間も速い。

1区から中央の吉居大和が飛び出したせいもあるだろう。

去年の箱根といい今年の出雲といい、吉居が1区を走るときにスピードに乗ったレースは、他の区間区間記録が続出するようなレース展開を牽引するな、と思う。

彼の走りにはレース全体の空気をひっくり返すくらいの、そんな気迫がある。

実際、今年吉居が箱根を走るまでの直近3、4年くらいはいかに力を使わずにそれなりに速く、いい順位で1区を走るか、というのが優勝を睨む各校の考えるレースだったのだけど、今年の吉居の飛び出しで全てがひっくり返ってしまった。

1区とは、文字通りレース展開の全てを左右する区間になってしまったのだ。*1

 

 

1区以降そつなく走った駒澤の優勝は、新しい時代の幕開けを感じる。

2位に國學院、3位に中央。

想像できた人は少ないんじゃないかと思う。

去年優勝で、ヴィンセントが走っていない東京国際の8位も十分健闘していると思うし、ステルス、と表現された法政の立ち位置も面白かった。

 

www.izumo-ekiden.jp

 

 

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レースを見終わったあと、Kバスに乗って殿上湯に別れを告げにきたら、最終日は、別れを惜しみにきたお客さんで盛況だった。

下足箱が足りなくなるくらい。

10/10、今日は1010(銭湯)の日。

最後の日は、ラベンダー湯。

昼からひっきりなしにお客さんがきているようで、早々にゆっぽくんのタオルは配り終えてしまったようだ。

殿上湯にゆかりのあるお客さんたちが集まって、賑やかだった。

 

 

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最後の日はBGMはなし。

お風呂に入りにきていたお客さんたちの惜しむ会話が、この日のBGM。

濃いラヴェンダーの香りを堪能して、お気に入りの熱湯が名残惜しくて、なかなか出られなくて。

 

水色のくすんだタイルを見ながら、まだ入りたかったな、と思いつつ。

昨年塗り替えられた濃い青の富士山と桜のピンクが印象的なペンキ絵を眺める。

去年の夏に、田中みずき氏のペンキ絵に塗り替えられていたのを知っていたので、まだまだ大丈夫だ、と思っていたのだ。(その前は中島氏のペンキ絵だった気がする。)

ペンキの濃い青が美しくて、哀しい。

浅い寝湯ができるところに座って、高い窓から入ってくる夕方の陽を浴びて、しばらく富士山を眺めていた。

ふと、豊島区要町にあった山の湯*2の鈴栄堂の美しい九谷焼のタイルを思い出した。

山の湯でこういう風に別れを惜しんでタイルを眺めていた時に、浮かんできたのが殿上湯だったからだった。

結局、両方失ってしまうことになったのだけど。

今年はほんとにつらい別れが多い。

 

radiotalk.jp

(山の湯の閉店の時には、Radiotalkを録った。)

 

 

名残惜しくてなかなか出られずに交互浴を繰り返していたけど、白湯と、夜の静謐な銭湯の時間には昨日ちゃんと別れを告げていたので。

今日はイベント湯として純粋に楽しみ、老若男女で賑わう浴室を眺めていた。

 

 

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浴室から出てくると、番台のお姉さんが、

ドリンクを1杯サービスしてるのでよかったらどうぞ

と勧めてくれる。

コロナ禍で閉められていたバーカウンターに初めて入って、お風呂上がりのドリンクをいただく。

ロビーの椅子に座って、ひっきりなしにやってくるお客さんを眺める。

気がすむまで座っていて、さて、もういいか、と思ったところで椅子から立った。

一昨日きた時も見かけたけれど、殿上湯の最後はカメラが入っているらしい。

取材は避けて、暖簾をくぐったあと、もう一度眺めて。

失ってしまう光景を脳裏に焼き付けた。

今日は、お天気が保って晴れていてよかった。

顔見知りの若い子たちがやってきたのか、

混んでそうなのであとで入りに来ます、

というのを聞いたご主人が、

今日は20:00までだからね、気をつけてね。

と言っていたのが印象的だった。

最後までちゃんとお風呂屋さんだ、と思った。

 

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65年間、おつかれさまでした。

ありがとうございます。

疲れ果てた夜に、ここの人の少なくなった時間の浴室で、交互浴をするのが私のひそかな楽しみでした。

 

「お風呂屋さん」「銭湯」というワードが浮かんだときに、真っ先に浮かぶ銭湯らしい銭湯は、自分の中では殿上湯だった。

この先もずっと、「銭湯」と言ったときにまず真っ先に連想するのは殿上湯なのだろう。

 

 

 

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帰りは、普段はチャリでシューっと通り過ぎている滝野川支所前通りから田端高台通りを、ほろ苦くしんみりした気持ちを噛み締めながら歩いた。

富士見橋でしばらく線路を眺めて、山手線が通り過ぎるのを待つ。

このあたりは間違いなく都会ではあるはずだけど、都会の街が持つ煌めきやざわめきからは取り残されたように静かで。

全然東京っぽくなくて、同時に山手線の北東エリア(上野~池袋)っぽさをすごく感じる場所である。

沿線のなかではいちばん下町っぽさがあり*3、それぞれの街にまだ義理と人情と粋という概念が残っている気がする。

 

5分も待てばやってくる都会の象徴の山手線は、ここから眺めているとあんまり都会を感じさせなかった。

東急池上線御嶽山駅の橋から眺めるJR横須賀線に似ているな、とふと思った。

 

 

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帰ってきて、セリーグクライマックスシリーズ阪神が勝ったことを知った。

やれやれ。

あんなに肉薄した試合だったのに、やっぱり番長もってないのか。

こればっかりは運だから仕方がないけれど。

阪神タイガース、おめでとうございます。

ヤクルトと阪神、どちらに分があるのだろうか。

ファイナルステージも見守ります。

オリックスを観るようになってから、以前より野球のニュースを気にするようになった気がする。

 

www.nikkansports.com

 

 

喪失感がすごくて、やっぱりさみしい。

 

 

 

*1:以前は前半で多少失敗しても巻き返しが効いたが、現状の拮抗してる状態では1区の出来が明暗を分けてる感じがある。

*2:2022年の5月に残念ながら閉店した。

*3:実際に下町が多いが、厳密にいうとこの通りのあたりは山の手なんじゃないかと思う。